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 親子三人で寿司屋に行ったとき、愛美が「おいしい」と連呼しながら、卵の寿司ばかりを食べていた。 「ママにもちょうだい」 「えー? ダメぇ。ハイ、パパ」  愛美が浩二の口元に、卵焼きの寿司を差し出す。  浩二は「うん、パパはいいや」と断っていた。 「すききらいはダメでしょ」と、娘に叱られていた。  あるとき結花は尋ねた。 「浩二さん、卵アレルギー? だったら言ってね」 「え? 大丈夫。そんなことないよ」  たしかに、朝食の目玉焼きは普通に食べるし、親子丼も好きそうだ。  (かたく)なにたまごやきを食べないことが、結花は不思議だった。  浩二が留守のあいだに、結花が掃除をしていたある日。  浩二のスーツをクリーニングに出そうと畳んだとき、定期入れがぱさりと落ちた。  拾い上げると、カード入れの隙間から、紙片が顔をのぞかせている。  なんとなく気になり、結花は紙片の端をつまみ、ひっぱりだした。  くたびれて、ところどころ折り目が切れそうな紙で、セロテープで補強してある。  四つにたたまれた紙をそっと広げ、目を落としながら、結花はぺたりと座りこんだ。
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