外伝 結婚写真2

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外伝 結婚写真2

由香が帰ってくると結婚情報誌は付箋だらけだった。 そしてソファーの上にはぐったりしている雄大。 「大丈夫?」 恐る恐る声をかけると、いつになく弱々しい声で言った。 「…目が痛い」 夕食後、雄大に尋ねてみた。 「それ、どうしたの?」 「買った。…飲んでる時に結婚式しないのか、って聞かれて色々話していたら流れで」 「雄大は…結婚式…したいの?」 「由香はしたくない?」 「親いないから式する、っていう発想無かったから」 雄大は、少し下を向いた由香の頭をよしよしと撫で、あるページを見せた。 【二人っきりでの挙式プラン】 「前に由香に断られた時は、結婚できただけで嬉しかったから。 でもやっぱり由香のドレス姿や、白無垢姿見たいんだ」 これなら二人だけの予定でできるし な、と付け加える。 由香はゆっくりページを捲る。 まぶしいくらいの色とりどりの世界に圧倒される。 「雄大のご両親は…やっぱり結婚式して欲しいの?」 「好きにしたらって言われてる」 だから親のことは気にしなくていいよ、と付け加える。 「由香はドレスとか着物来たくない?」 「…わからない。けど、雄大のは見てみたい」 「由香が着るなら俺も着るよ」 写真だけなら、という由香の決心が鈍らないうちに雑誌に載っていた会社に予約し、次の日一緒に出向いた。 由香は接客してくれた女性に「おめでとうございます!」と言われる度に顔を赤くしてはにかむ。 説明を受け、プランと撮影日を決めて予約をする。 撮影日までに衣装を決め前金を振込するだけでいいらしい。 「衣装は一人で選ぶから!」 一緒に選ぼうと提案するが頑なに拒まれた。少し残念に思うが撮影日当日のお楽しみとのことで、我慢する。 二人で日程を合わせて衣装を選びに行ったがスタッフにお願いをしてお互いの衣装については横に立った時のバランスがおかしいということ以外は、当日まで黙って貰うことにした。 由香が現れた時、言葉を失うということはこういうことか、と理解した。 「…キレイだな」 やっとそれだけを絞り出す。 色白の由香に、シックなデザインの純白のドレスが映えていた。 雄大はスタッフが「そろそろ撮影を」と声をかけるまで、由香に見とれていた。 白無垢姿は艶やかだった。赤ふきの白無垢に口紅の赤。 白い装いに赤が混じることで先程とは別人のように見える。 また違った意味で見とれ、雄大は夢のような時間を過ごした。 あまり言葉では喜びを現さなかった由香だが、撮影した写真が届くと嬉しそうにしていた。 データ納品だったため、二人でパソコンを覗きこむ。 「この写真とこの写真は2枚現像してほしいの。 部屋に飾りたいから」 「わかった」 かわいいことをいう由香を抱きしめ軽くキスをする。 「雄大…」 「なに?」 「…ありがとう、一緒に写真取れて嬉しかった。いい思い出になった」 雄大は由香を抱き寄せる。 「これからも一緒に色んなことしよう。沢山思い出残そう」 次は、新婚旅行かな?と付け加える。 「…そうだね、新婚旅行も行きたい」 素直な由香が愛しい。 結婚してから、少しずつ薄くなってきた壁。 感情も若干だが表してくれるようになった。 あの時諦めなくてよかった。 雄大は今胸にいる愛しい人の体温を感じながらゆっくり目を閉じた。
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