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プロポーズ2
ねむれない夜を過ごした後、由香は雄大に電話をして会う約束を取り付けた。
何度も通いなれた雄大の家。
「手が離せないから直接きて欲しい」
駅から10分程の距離でも可能な限り迎えに来ていた雄大が今日は来ない。
ー怒らせたんだろうか。
まだプロポーズの返事を伝えてないので、怒る要素も何もない。
それに毎回迎えにきていたわけでもないのにも関わらず、由香はネガティブな感情に捕らわれていた。
勘のいい雄大のことだから、電話の声で気づいているのでは?
昨日の寝不足もあり、いつも以上に負のループから抜け出せなかった。
「いつものでいい?」
「うん、ありがとう」
雄大がキッチンに行くのを確認してそっと息を吐く
ーよかった、今は怒っていない
今から怒らせるかもしれない
悲しませるかもしれない
それでも今は穏やかな姿にとりあえず安堵する。
由香は人と関わるのも争うのも苦手だ。
営業職のため、人に話しても信じてもらえないのがオチなので公言はしないが。
常に心に仮面をつけ、あたえられた役を演じる。
今までで一番心を許せていた雄大でも、仮面を外したありのままの自分をさらけ出すことは出来なかった。
コーヒーを手に戻ってきた雄大に向けて、心に仮面をつけて、話し出した。
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