プロローグ

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「川尻さんから部長のメッセージを受け取りました…」 「・・・一つは大口の高木家と一ノ瀬家の進捗状況が訊きたくて…」 「あ…はい…では後で進捗状況の資料をお持ち致します」 「もう一つはまだ、水面下動いているコトだけど…我が『ジュテーム』グループはこの度、『フロンティアカンパニー』に吸収合併されるコトになった」 「えっ!?あの…フロンティアホテルで有名な…」 「そうだ・・・まぁ―少子高齢だし、スマート婚を好む今時の若者たちには結婚式場は不必要な場所かもしれないな…」 「楠部長がそんなコト言わないで下さい…」 赤子を抱え、何処の会社からも不採用になり、路頭に迷っていた私。 そんな私を面接したのが当時、プランナーチーフをしていた楠部長だった。 元CAで、ウエディング業界は未知の世界。 お客様の理想の結婚を実現化させるウエディングプランナー。 式や披露宴の演出…結婚式をトータルでプロデュースする。 CAと同じで華やかな職業だけど、体力的に過酷な仕事だった。 でも、この『ジュテーム東京』で挙式披露宴を行ったカップルの満足度は高く、『水瀬さんのおかげで素敵な結婚式を挙げられた』と笑顔でお礼を言われた時はプランナーをやってて良かったと思える。 実務経験のない私を採用し、プランナーの仕事の醍醐味を教えてくれたのが楠部長その人で。 そんな恩人から、ネガティブな意見が飛び出すなんて、朝からショックだった。
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