ディケム

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ディケム

 東アジアの独裁国家、定例の晩餐会が催され、フランスの記者数人が招待されていた。  その国の政情は不安定で、クーデターの噂が絶えなかった。晩餐会には、国家元首や政府の要人が集まる。毒ガス、毒薬、爆破、機関銃掃射・・・晩餐会出席者をすべて消せば、簡単に政権を転覆できる絶好のチャンスだった。だが、晩餐会には必ず外国の一般人が招待されていた。彼らまで殺害してしまっては、クーデター政府の正当性を諸外国に認めさせるのは難しい。つまり外国人ゲストは、正装した人質だった。  メインディッシュ、牛ヒレ肉のロッシーニ風に合わせ、ワイン係が赤ワイン、肩のはったボルドーのボトルを運んでくる。グラスに少しだけ注ぎ、元首がテイスティングしてうなずく。
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