💠 Scene 31

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💠 Scene 31

 その夜、二人は初めて肌を重ね合って寝た。翼は誠を固く抱きしめた。  人肌がこんなに温かいとは知らなかった。  彼女は誠の腕に抱かれ安らいだ。同時に今の幸せを“幸せ過ぎて怖い”と思った。  誠は翼が愛に飢えていることを知っていた。彼女が誠を狂おしい程求めていることにも気付いていた。気付いていながら気付いかない振りをしていた。  五条家は彼女を決して認めないだろう。そのことで翼は辛い思いをするかもしれない。それでも天涯孤独のまま生きていくよりはずっとマシだろう。  誠は決心したのであった。  今までは一族の為に生きてきた。医者になる夢まで捨てた。妻くらいは自分で選ぶ権利はあるだろう。  この結婚が許されなくても構わない。自分の人生のレールは自分で敷く。  誠は五条家から離れるつもりであった。    
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