朝を待つ

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「ねぇ」  大きくブランコを漕いで、近づいたり遠退いたりして揺れ動く快晴の空を眺めながら、私はつぶやいた。すると、あなたはしっかりとブランコを止めて、「うん?」と優しい声で私の方を振り向く。 「どうしていつも笑ってるの?」  ギーコ、ギーコ、金属の擦れ合う音に合わせて、世界が一面の青い空から木々、建物、地面、私たちの住む世界に切り変わる。世界の往復を繰り返しているうちに、やがて金属の擦れ合う音しか聞こえなくなったことに気づく。あなたを見ると、視線を地面に彷徨わせて困ったように笑っていた。 「……どうしてって、言われても……」  戸惑いを含んだ声色が小さく聞こえる。私はなおもブランコを漕ぎ続けているので、その張りついたような笑顔がチェーン越しにゆらゆらと通り過ぎる。 「楽しいから?」 「……そういうときも、あるかな?」  あなたは少し首を傾げてつぶやいた。それから私から顔を逸らすと、砂を弄ぶように軽く地面を蹴って、小さくブランコを揺らす。それでもあなたの顔は微笑んだままで、私は思わずブランコを止めた。改めて、彼をまっすぐに見つめて言う。 「そうじゃないときも笑ってるの?」
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