朝を待つ

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 わあっとドッジボールをしている方から一度、歓声が聞こえた。あなたはそれを、風の声を聴くように目を伏せて、聞いていたように見えた。そして次の瞬間、笑顔の明度を強くして私に向き直る。 「僕が楽しいかどうかは関係ないんだ。笑ってた方がみんな嬉しいでしょ?」  その時、青空を背景に笑ったあなたの顔は青白く見えて、髪はさながら空に浮かぶ雲のように純粋な白さに溢れていた。風に吹かれればきっと、あっけなく青に飲まれて消え失せてしまいそうにも、見えなくはなかった。他の子たちの笑い声がひそやかに耳に届く。こんなこと言ったら変に思われるから、他の人には内緒ね、薄い唇に人差し指を押し当てながら、それでもあなたは笑っていた。
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