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「どうも、安岡と申します。もしかして横山興産のことですか?」
安岡は声を潜めて尋ねた。
「はい、ある人から金で頼まれました。金に目が眩んだんです」
「ここじゃあれですから現地に行きましょう」
安岡は署で話しては全て明るみで出てしまうと堂園を外に連れ出した。車に乗せて花咲町の横山興産が入るビルの前で止めた。
「このビルの三階ですか?」
「はいそうです」
「頼んだのはどなたですか?」
「いえお名前は聞いておりません」
安岡は胸を撫で下ろした。
「それじゃ問題ありませんよ、あなたが管理されていたビルを管理目的で開けたのでしょ、全く問題ないじゃありませんか。何か物を取ったとかしてないんでしょ?」
「はい、開けただけです。ですが不法です、私は管理人と言う立場を利用して犯罪に加担しました。逮捕してください」
車の中で腕をクロスした。縄で縛るわけじゃない。昔気質の正直な老人を父親と重ねていた。
「堂園さん、でもどうして来られたんですか。心境の変化とか?」
「横山興産様の社長が自宅に来ました。退職祝いと言って大金を置いて行かれました。テレビのニュースで事の大きさに驚きました」
「富樫が尋ねてきたんですか?」
「はい」
「いつ?」
「昼間です」
富樫はそれなりに調査をしていた。どうしてこの老人は復讐の対象にならなかったのだろうか。
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