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「刑事は他に、ホシの情報とか?」
「横山興産の半グレに間違いない、それだけです。お前も狙われるかもしれないから気を付けるよう念を押されました」
「他のメンバーは?」
「二人だけ自宅待機しています、他は全員辞めるそうです。高畑からラインがありました。明日朝一に今日の刑事と署で待ち合わせをしているので、関連書類を取りに寄るそうです」
「彼女耳を落とされたんじゃないか?」
「はい、でも所長から話を聞いているからと。頭が下がります」
多くの所員が辞めた、それが当たり前の行動だろう。耳を削がれ尚尽くす高畑の責任感に圧倒される。
「俺はこれから病院に行く。橋本、真崎、高畑をやったのは横山興産の半グレだろう、だが所長だけは手口が違う、プロのやり口だ。一命を取り留めたことを知ればまた狙われる。俺が警護する。桜井、お前も気を付けろ、閉め切って窓も開けるな、来客にも応対するな、警察と偽る可能性もある。すぐに俺に連絡しろ。俺に連絡が付かなければその刑事に電話しろ、いいな」
桜井に言い残して病院に向かった。バイクで五分の距離である。
新築の国際展示場の前に盗んだワゴン車を乗り捨てた。警友北病院と道路を挟んで二人は煙草を咥えた。
「シャバでの最後の一服かもしれねえなあ」
「兄貴、俺は逃げるぞ、逃げられるとこまで逃げてやる」
富樫は死を覚悟している。死刑を待っている長い間に気が緩み命乞いを晒したくない。一方舎弟の笠井は逃げ延びるつもりでいる。
「ああいいさ、お前の好きなようにすりゃいい」
「兄貴ぼちぼち行くか」
笠井が紙袋から白衣を出した。聴診器をぶら提げた。
「これやり過ぎじゃねえか」
富樫が笑った。
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