料理と能力

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料理と能力

私は料理が苦手だ。 拙作「魔法なんか」にグルメペンを出したのは、私が欲しいからだ。 けど、慣れというのは素晴らしいもので、最近は作れるようになった。 以前は、包丁と火が怖くてしかたなかったし、不器用過ぎて指から流血は当たり前だった。 石の上に三年。 と言うけれど、まともに料理ができるようになるまでに、五年以上はかかった。 (あ。年齢バレるか?年齢、性別、生物不詳でいたいのだけど……) まだレパートリーは少ないし、ずぼら飯をよくする。 いや、ずぼらではない。 なるべく栄養をとれて、且つなるべく簡単な料理を作ろうと、効率化を求めたものだ。 そんなことをしていることを知ってか、妹に栄養をとれて簡単な料理を教えてほしいと言われた。 私はある日の夕食を伝えた。 キムチ、魚肉ソーセージ、納豆、糸寒天を入れた即席ラーメン。 「まずそう」 「好きなものを入れれば問題ない」 訊いてきたから教えてあげたのに、そんなことを言ってくるなんて解せない。 「もっとちゃんとしたの教えて」 「肉野菜炒めか肉野菜スープ。毎回味を変えれば問題ない」 今度は、文句を言われる前に説明を加えた。 「じゃぁ、今日はシチューにしようかな」 私の適当レシピから解をみつけた彼女は、料理が得意だ。 うらやましい。 その能力を分けてほしい。 それを言うと、「その頭の良さを分けてほしい」と妹に言われる。 けど、それはかいかぶり過ぎだ。 私の頭が良かったら、きっと起業家として億ションに住んでいるだろうし、きっと名の知れた小説家としてヤギトラハウスという御殿を建てているはずだろ?
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