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物を隠されたり、ノートをボロボロにされたり。机の中は危ないと思い毎日重い教科書を持ち帰るのも苦痛だった。 仲の良かった友だちは友だちではなかった。 体操着をはさみかなにかでボロボロにされたことがあった。 持っていた二枚とも。 先生に言えば良かったのだろうが僕は先生と話すことに抵抗があった。 先生は僕の母が病気である事を知っていたので同情の目でいつも話してくる。それがとても、嫌で仕方がなかった。 だから僕は父親に新しい体操着を買うために嘘をついた。 「お父さん、今度の休みの日に友だちと遊びに行きたいんだ。そのためのお金がほしい」 前もって考えておいたセリフに父は疑うことなくお金を渡してくれた。 「楽しんでこい」 頭をなでながらそう言う父の手は温かかった。 申し訳なさと、惨めさと、嘘をつく自分と、自分をいじめてくる奴らと色んなものが頭をめぐり部屋で声を押し殺して泣いた。
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