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3日後には私は嘘みたいに頭痛がなくなり、食欲も徐々に増えてきた。
洗濯物を干していたら、新婚のようでにやにやまでしてくる。
夕飯、作ってみよ。時間あるし。
自転車で買い物へ行こうと思ったら湊の自転車のサドルが下がらなかった。
これじゃあ乗れないな。
レバーと格闘していると、自転車置き場のすぐ向かいの住人が家から出てきて、話しかけてきた。
「こんにちはー。」
「あ、こんにちは。」
「どうかされたんですか？」
「サドルが下がらなくて…」
「僕やりましょうか？」
「お急ぎじゃないんですか？」
「一番下まで下げたらいい？」
彼は体重をかけてレバーを回して、サドルを下げてくれた。
「おおっ。凄い！一瞬でしたね！」
「んっあれっでもこれパンクしてますよ。」
住人がタイヤをムニムニ摘んでいる。
「うわっ、すみません、折角下げてもらったのに。」
「あ、じゃあ僕の自転車使って。僕バイクで行くんで。
あ、鍵はね、ここに隠してるから。」
自転車置き場の柱の横にフックを付けて、鍵をかけていた。
「凄い！頭いいですね。」
「でしょ？ここにまたかけておいてくれたらいいから。」
「ありがとうございます。」
「サドル1番下まで下げておくね。乗り終わってもこのままでいいから。また何かあったら呼んでね。知ってると思うけど、僕ここに住んでるから。笑」
住人は自分の部屋を指差して言った。
「あ、はい。ご親切にどうも。」
おかげで沢山商店街で購入出来た。
手料理を湊は大袈裟に喜んでくれた。
シチューと筑前煮とエビのサラダ。
洋食と和食と、なんだかごちゃ混ぜなメニュー
「こんなに買い物大変だったろ？」
「大丈夫、自転車で行ったから。」
「は？自転車パンクしてるはずだけど？」
「あぁ、やっぱりそうだったんだ。」
「ちょい、ならどの自転車で行ったわけ？」
「自転車置き場のすぐ前の部屋の人がね、貸してくれたの。」
「誰それ？」
「すっごく親切な人。」
「どの部屋の人？どんな人？男？」
「ダッフルコート着た男の人で。」
「…お礼に行ってくるわ。どの部屋の人か教えて。」
玄関を出て、２階から自転車置き場の前の部屋を指差した。
「あそこの人だよ。助かりましたって伝えてね。」
湊は私を無視して私を部屋に押し込むと、玄関のドアに鍵を閉めて行ってしまった。
「出てこなかった。居留守かもな。
クソッ。」
帰ってくるなり怒っている。
「バイトかなぁ。バイクあった？学生さんかもね。大変だね、こんな遅くまで。」
「ハァッ？正気か？あおいナンパされてんだよ。頼むからしっかりしてくれって。」
「ナンパって…。自転車貸してくれただけだよ。」
「あぁ、もういいわ。ダメだ。早く実家帰ろう。もう元気になったろ？イラつく。ダメだわ。こんなん1人にしておけないわ。」
「え…もうちょっとここに居たいのに…。」
「だめ！もう帰れ！
腹立つわー。あおいの事見た事あったんだな…狙ってたのかもな…。」
ぶつぶつ言いながらずっと湊はお怒りだった。
たった数日で私は実家に返される事になってしまった。
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