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湊は品出し班のバイトリーダー。
いや、もはや店長か?という働きぶり。
人懐っこい笑顔で、テキパキと作業を捌いていくから皆んなから色んな面で頼りにされる存在だった。
「佐々木って何にも知らないのな。」
湊にしょっちゅうそう言われては、私は色々教えてもらっていた。
湊以外の他のバイトの人と話す事はあまりなく、今思えば私はかなり浮いていたと思う。
友達作りに来たわけではないし、彼氏を作りに来たわけでもない。
仕事、が私はしてみたかったのだ。
そしてそんなモチベなので、愛想も悪かったと思う。
人におべんちゃらを言うのが苦手で、時間の無駄と思っていたし、それまでの人生に必要の無いものだったからだ。
そんな世間知らずな、いや、失礼な私にも湊は分け隔てなく接してくれて、なんて面倒見のよい方なんだと思っていた。
バイトを初めて3ヶ月が経った頃にあの事件がおきた。
私は店長に事務所内での簡単な事務仕事を任されるようになっていた。
それは良かったのだけど、いつも店長との距離感が近い事が気になっていた。
ケーキを買ってきたと食べさせたがったり、私のプライベートな事、どこで買い物をしているかなどを知りたがったり。
私の事を心配してくださっているのだと捉えていた私は一つ一つ真面目に答えていた。
そしてついに事件がおきてしまった。
後ろから突然抱きついてきた店長からどうにか離れようと揉み合っていた所へ、ちょうど湊が事務所へ入ってきた。
湊は入ってくるなり、店長を私から引き剥がし馬乗りになると、見たことも無い怖い顔で店長を殴った。
汚い言葉と共に…。
そこへ騒ぎに気付いた社員やバイトが仲裁に入ってきて、なんとか騒ぎは収まったのだった。
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