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「佐々木あおいと申します。
どうぞ宜しくお願いいたします。」
深々と頭を下げて、黒髪が揺れた。
いやいや、バイト先のチョイスよ。
絶対間違ってんだろうが。
どう見てもあなたのバイト先はここじゃないと思いますが。
「じゃ。佐々木さん教えるからこっち来てね。」
いつもは適当に他の誰かが教えるのを、店長自ら手ほどきしている。
ロリオタめ。
「あのー店長、俺、教えますよ。鹿島食品さんの打ち合わせあるんじゃないすか。」
「あー…あぁそうか…チッ
じゃ、佐々木さん、また後で教えてあげるからね。あ、帰る時また僕のとこ来てね。」
「はい。ありがとうございました。」
そんな頭ばっか下げて腰大丈夫か。
俺は彼女を手招きして、バックヤードに連れていった。
「いくつ?」
「あ、18歳です。」
「俺は20。一応リーダーしてるから何でも聞いて。あといちいち頭下げなくていーよ。
そんな下げてたら頭クラクラしない?」
「あ、はい、承知しました。」
彼女はまた深々と頭を下げた。
「おいおい、聞いてた?」
俺がツッコむや否や、「コレの事でしたね。」と初めて笑った顔をみせた。
その笑顔に、何故か全部もっていかれた。
何か不思議なものを感じた瞬間だった。
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