番外編

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「七瀬さん、騙しましたね。」 佐々木が珍しくバイト終わりに俺を呼び止めたかと思うと、怒っている 「告白ゲームのこと? つきあいたかったの?違うでしょ? あいつ手早いから気をつけた方がいいよ。まぁやりたいなら別だけど。」 「や、やりたい、とか、ないです。絶対ないです。」 「でしょ?私そういうの分かりません、やり逃げされました、とか困るの女の子だよ?」 「ほんとだ…ありがとう…。 ごめん…誤解してた。」 「お、ようやくタメ口。」 「あ、」 「うん、いい感じ。なんなら皆んなみたいに湊って呼んでもいいよ。仕事ってコミュニケーションが大事になってくるから。俺で練習しよっか。」 「あー、そうですね。あ、そうだね。 うん。頑張るね。」 佐々木は嬉しそうに笑った。 その顔を向けられるたびに、ゲームじゃない告白をいつするべきか迷っていた。 ーーーーーーー バイト終わり、皆んなでカラオケに来ていた。 もちろん佐々木は来ない。 誘ってもないから当たり前か。 「湊って佐々木さんの事好きだよね。」 盛り上がるパーティールームの隅で、バイト仲間の聡美が詰め寄ってきた。 「どした?」 「見てたら分かるよ。どこがいいわけ?暗くない?あの子。」 こーゆーの言われた時点で彼女枠から外れるわ。 可愛い顔してんのに勿体ない。 「聡美の方がモテるんだからいーじゃん。 ほっときなって。」 「えーっ。そうだけど、私は湊がいいんだもん。また2人で遊びに行きたいー。」 「あー。それはもうないわ、ごめん。」 「え、本当に佐々木さんなの?」 「いや、まだ告ったわけじゃないから。」 「は?え?待って待って。おかしいって。湊ってああいうのがタイプだったっけ?」 「聡美さ、これで佐々木の事いじめるとかやめてよ?」 「は?いじめはしないけど湊の事は負けないつもりだから。」 「ごめん、もう俺決まってるから。モテるんだから他に男いっぱいいるでしょ?」 あ… 聡美は泣き出して抱きついてきた。 周りのやつらは勝手な事ばっかり言ってる。 自分の尻拭いは己で拭きますよ。 「落ちついた?」 カラオケの駐車場に連れてきて、話を聞いていた。 聡美はずっと鼻をすすりながら大きなタオルハンカチを目に押さえている。 何時間コースかなー。まぁしかたないか。 「1ミリも、可能性、ないの?」 「うん、ない。ごめん。」 これの繰り返し。 あと何回言えばいいんだか。 「あの子と、どこまでやったの?」 「いやだからまだ告ってもないし付き合ってもないから。それに俺今回はマジだから大切にしたいし簡単に手を出すつもりはないよ。」 「えーーっ。そんなハッキリ普通言う? 私もうやだ…じゃあセフレでいいから付き合おうよ。」 「あーそういうのもう聡美もやめろ。 自分大事にしろよ。 お前いい女なんだからさ。」 あ… また抱きついてきた… なんだかんだでずっと駐車場でクダを巻いていた。
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