番外編

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聡美の執着は俺の想像を遥かに越えてきた。 作業していると、チェッカーの聡美が休憩で俺にまとわりつく。 思ってたよりしつこいな…。 佐々木は…と。 あーまたそんな脚立に乗って危なっかしいな… ああ…そんなとこの在庫はとらなくていーって。 あ?客が佐々木になんか渡してる。 店長が気づいて仲裁に入ったな。 事務所に行くと、店長と副店長が紙を見ながら話し合っていた。 紙を覗くと、名前と番号が書いてある。 ナンパか。まぁよくあるんだこれが。 「じゃあ、事務所で作業させて一回様子見しましょうか。」 ふーん。 まあ、その方がいい、とはいえない。 ロリオタ…。 そこから店長の佐々木へのまとわりつき方は日々胃が痛くなるほどだった。 俺はなるべく目を離さないように、頻繁に事務所へ出入りした。 リーダーの特権フル活用。 佐々木はというと、いつもと変わらない。 何にも分かってないんだろうな… 澄ました顔で、店長が用意したであろうシュークリームを食べさせられていた。 帰りしな、佐々木を呼び止めた。 「おつかれっ。今日はまた何か食わされてたじゃん。」 声をかけると、佐々木は恥ずかしそうにはにかんだ。 「うん。見た?今日はシュークリームだったよ。」 最近ようやくタメ口が普通になってきて、俺は日々優越感に浸っている。 「どうなん?美味しいの?」 佐々木は申し訳なさそうに首を横にふった。 「ぶぁはははっ。こんなクソまずいの私に食わせんなって投げつけてやったらいんだよ。」 「もうっ。そんなの出来るわけないじゃん。 でも今日のは本当にキツかった…。」 「今度また困ったらメールで呼んで。俺が一口で食ってやるわ。」 どさくさに紛れて頭をポンと触った。 「あ、ほんとに?助かるなぁ。」 上目遣いで笑いかけられて、無事思考停止した。
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