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私は玄関をでて、家の前でオロオロしていた。
もう時刻は23時を過ぎている。
ということは湊が拉致されてから10時間以上経っていることになる。
メールも一度だけ「体調悪くなってない?」と来たのみ。
母はもうお風呂を済ませて寝室へ行ってしまった。
私は心配でしょうがなくて、家の前の道路を行ったり来たりしていた。
2月の23時、空気がピンと張り詰めた冬の夜。
祖父があっさりと私を解放してくれるとは思わなかったが、問題は何より父だ。
どうしたらいいものか。
母はああ言ってくれたけど、正直、当てにならない。
次の一手は…もうない。
考えていると頭に血が上ってきて、全く寒く感じ……さーむーいー
寒いに決まってる。
2月の23時だよ。
どんな状況でも寒い。
でもいてもたってもいられない。
あー寒いし風も出てきたしなんか家の前でも怖いし。
あの電柱からオバケとかでできたらどうしよう……
門扉を開けて中に入ったり外に出たりしていると、ライトが…
私の目の前に2台の車が停まった。
一台はパパの車。
もう一台は代行の車。
パパは代行嫌いな筈なのに珍しいと思った。
ドアが開くと、湊が勢いよく出てきた。
「どうした?」
さも私がおかしい行動をしているかのようにちょっと怒って言ってくるけど…
「心配したのーっ。」
良かった。元気そうで…。
もう何回泣くんだと自分でも思うけれど、ワーンと泣いてしまった。
「あーそっかそっか、ごめんごめん。」
何故か湊は嬉しそうに私を抱きしめた。
途端だった、
「冷たっ、ちょい、ずっと外にいたな?
怒るよ?いっつも俺なんて言ってる?」
「怒らないでよ…。」
「今何時だと思ってんの?言えっ。」
湊は私の顎を手のひらで包むと自分にクイッと向けた。
「おいおい、もうそこらにしてくれ。わかったから。」
湊の後ろから照れた父が現れて、私達を通りすぎていった。
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