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「俺、義兄さんが好きなんだ」
『好き』っていうのは人としてっていう意味じゃない。
異性のように恋してるっていう意味。
その俺の言葉を、母さんはきちんと理解してくれたみたいだ。
初めは大きく目を見開いたあと、目を窄めて、「そう」とひとことそう言った。
「学校がさ、男子校だろ? ガッコじゃ同性で恋人同士になった奴らがわんさかいて。ほら、義兄さんあんなルックスじゃん? 頭も良いしスポーツも万能で。ずっと憧れてたんだ」
ずっと閉じ込めていた恋心を一度口にすれば、次から次へと溢れ出す。
俺は呼吸するのさえも忘れるくらい、夢中になって母さんに話していく……。
「でさ、母さんの再婚相手が律さんのお父さんでさ。一緒に暮らすうちにどんどん好きになっていって……翔さん、すごく格好いいじゃん? 律さんと翔さん似てるよね? なんでもできちゃうところとかほんとそっくり。母さんが翔さんを好きになったのわかる。……でね、俺も――。俺、母さんの子なんだなって思うよ。好みのタイプ同じだもん。俺は律さんが好き。律さんに恋してる」
そこまで言うと、俺は呼吸するために、ひとつ息を吐き出した。
「それは、本当?」
――え?
てっきり返事は俺の前方から返ってくるものだとばかり思っていた。
だけどあれ?
声は後ろから聞こえたような?
空耳だろうか?
思いも寄らない方向から声が聞こえたように思って振り返れば、
そこには律さんがいて――。
「なっ!」
なんで律さんがいるの?
どうしよう。
聞かれた!?
俺、終わっちゃう!!
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