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そのあることっていうのは――……。
俺の母親。
再婚しました。
母さんは身内の俺が言うのもなんだけど、色白で華奢だし。おっとりふわふわしてる。目が離せない可愛い女性だ。
母さんが14の時に父さんと知り合って16歳っていう若さで俺を生んだ。
その父さんは3年前、会社から帰宅途中に交通事故で、バイクに跳ねられてこの世を去った。
――以来、母さんがずっと女手ひとつ、家計を支えてくれている。
あ、もちろん俺だって何もしてないわけじゃない。
学校の許可をもらってバイトしてるし、料理だってするし、洗濯とか洗い物とか家事全般俺の仕事。
でも金銭面だけは、まだ子供な俺にはどうしようもできない。
なにぶん高校生の時給なんてたかが知れてる。ほんの少し毛が生えたくらいの微々たるものだ。
そんなだから、俺は成績を上げて特待生。つまりは特別待遇生徒になれたんだ。俺、少しでも母さんを助けたくてすっげぇ頑張ったよ。
本当は、さ。高校に行かず、働こうとしたんだ。そしたら母さんが片親がいない所為で学校に行かせてやれないなんて悲しいって言われて……。
だから頑張って学費が全額免除になる成績まで上がって、どうにかこうにか入学することに成功したんだ。
そんな頑張り屋な母さんは看護師をしていて、1年前に、二番目の運命の男性と出会ったんだ。その人が再婚相手の椎名 翔さん。
翔さんは大手企業の社長さんで、ストレスで胃潰瘍になちゃって。
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