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Side 太陽
何かがおかしい。
太陽は目の前の北風と名乗る人物に違和感を感じていた。
入学式の三日前、やっと北風さんに会えるってわくわくドキドキして入寮した。
北風さんは寮生じゃないはずだから実際会えるのは早くても入学式の日だろうと思っていた。
だけど、入寮してすぐ出会ってしまった。
隣りの部屋に挨拶に行った時、ドアが少し開いていて「北風」「太陽」って単語が聞こえてきたんだ。
逸る気持ちを抑えてドアをノックすると、少し派手めの綺麗な子が出てきた。
――――え?
俺がイメージしていた北風さんとまったく違っていた。
でも、見た目で判断しちゃだめだ、と思い直した。
「俺、太陽。北風さんでしょう?」
「?」
「やっと会えたね。俺ずっと会えるの楽しみにしてたんだ」
「あ、うん。僕もだよ。太陽?」
わぁ、こんなにすぐ会えるなんて。やっぱり俺たちは『運命』なんだ。
だけど―――。違和感は一緒に過ごすにつれ増していくばかり…。
「ねぇ、北風さん、ジョンがね……」
「ジョン?なになに、外人の友だち?」
「――犬だよ。俺が飼ってる犬のジョン…」
「あ、そう、そうだったね。で、そのジョンがどうしたの?」
「―――いや、いい。なんでもない」
「そう?じゃあさっさとご飯食べに行こう?」
そう言うと俺の腕を引っ張り食堂へ連れていかれた。
北風さん、あなたは誰……?
俺は目の前の北風さんに心の中で問いかけてみたが、勿論返事はなかった。
Side 太陽 -終-
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