恋に落ちる音

4/15
33人が本棚に入れています
本棚に追加
/15ページ
 翌日になっても元気が出ない。  あっという間に恋をして、好きになった相手が何処の誰かもわからないなんてね。  心が上へ下への大騒ぎでなんだか疲れてしまった。  高校が午前授業だったので、半日頑張った。遊びに行く気分にもなれず、駅で友達と別れてノロノロ歩く。  そうだ、たまには あのお店に寄ってお昼ご飯代わりにお団子でも食べよう。  名案を思い付き、落ち込んだ少し心が浮上しはじめる。  駅から家に帰るには、少し遠回りだけれど気分転換にはうってつけだ。  目的の和菓子屋さんは、神社の参道に当たる道沿いにあり、昭和レトロな佇まい。  店内で買った物を直ぐに食べれるテーブルもある。昔ながらのイートインコーナーだ。  そうだ、ついでと言っては何だけど、時間があるから運気を上げるために神社に寄ってお守りでも買おうかな。  神社を目指して、テクテク歩く。初冬のひんやりした空気は、何だか気持ちを引き締めてくれる。  すっかり葉を落とした銀杏の木の間から差す柔らかい日差しも気持ちがいい。道端のニャンコもあくびをしながら伸びをして日光浴を楽しんでいた。  お目当ての和菓子屋に着くと店頭には、美味しそうなお団子やお饅頭・おにぎり・おいなりさんが並んでいて目移りしてしまう。  その中から、ランチ代わりにミタラシ団子とお赤飯のおにぎりをチョイス。店内でお茶をもらいおいしく頂いき、エネルギーチャージ完了。  鳥居をくぐり手水舎で手を洗い、お参りをする。  お賽銭もフンパツ!500円  願いは、もちろん昨日の彼との縁結び。  二礼二拍手一礼、心を込めてお祈りをした。  その後、社務所に寄ってお守りを探す。すると、昨日の彼のキーホルダーと同じ、根締めの鈴付き和風キーホルダーのお守りが売られていた。  思わず手を伸ばしそのキーホルダーを購入する。  早速、お守りを袋から出してしてみると、やっぱり昨日の彼の持っていたものと同じデザインだった。  彼に少し近付けようで、気持ちがほっこりする。  自分も家の鍵のキーホルダーにしようと鍵を取り付けて、振ってみた。  ” チャリーン ”  昨日の彼のキーホルダーと同じ音がした。  きっと、また彼に会える。  そんな気がする。  ” チャリーン ”  私が恋に落ちた音が聞こえた。
/15ページ

最初のコメントを投稿しよう!