第13話閑話 その頃、領地では・・・崩壊の兆し

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第13話閑話 その頃、領地では・・・崩壊の兆し

~とある領民達の会話~ 「なぁ、あそこって空き家だったっけ?雑貨屋があったような気がするんだけど」 「ん?・・・あぁ、あそこか。先日、店じまいしたぞ」 「まじかよ。オシャレで気に入ってたのに」 「俺も気に入ってたんだけどなぁ。ここら辺じゃ見ない物とか扱ってたしな。何でも本部の方へ戻るらしいぞ」 「本部ってどこだよ?王都か?」 「さぁ、知らね」 彼らは知らない。シルスナが、外国の商人を領地へ誘致することで物流が潤っていたことに。 「店じまいで思い出したけど、安月堂ももうすぐ店を畳むらしいぞ」 「えっ?ウソだろ。食料品とか安く買える店だったのになぁ・・・」 「それな。オマケに来月から、また食料品の値段が上がるらしいぞ」 「はぁっ!?おいおい、これ以上値段が上がると飢え死にしちまうよ!」 「だよなぁ。うちの家内も、節約節約ってうるさいの何の」 「お前のとこもかよ。うちもなー、かーちゃんがうるさいんだわ」 彼らは知らない。シルスナが意図的に価格競争をさせることにより、現地の商人の独占既得を防ぎ適正価格を保っていたことを。 「うぉっ!?」 「おいおい、気をつけろよ」 「クソっ、転んじまったぜ。何だよ穴ぼこだらけじゃねぇか!」 「そういえば、最近街並みが汚くなったよな。いつもはじーさんや子供が掃除して・・・そういや、アイツらどこいったんだ?」 「ガキやジジィのことなんて知らねぇよ。あー、いてて。ツイてねぇな」 彼らは知らない。シルスナが慈善事業の一環として、職のない高齢者と身寄りのない子供達に仕事を与え街の美化に取り組んでいたことに。 「なぁ、気分転換に飲んでいかね?」 「おいおいおい、真っ昼間から酒かよ」 「いいじゃねぇか。たまにはパーっとやろうぜ。勇者の酒場にいこうぜ」 「・・・あー。あそこは辞めとけ」 「はぁ、何でだよ?」 「今あそこは、かなりヤバいやつらがたむろってるって噂だぜ」 「ヤバいやつら~?」 「あぁ、何でも盗賊や闇商人とかが出入りしてるらしいぜ」 「流石にそれはウソだろ。そんなの領兵が見逃すわけないだろ」 「まぁ、流石に俺もそう思うわ。でも万が一があるだろ?」 「そりゃそうだけど・・・」 彼らは知らない。現当主の方針によって、シルスナが行ってきた数多くの事業が凍結したこと。現当主の経費削減によって、街の警備が手薄になっていることに。 そして、そのことが原因で街には浮浪者が溢れ、薄暗い者たちが簡単に出入りしている。 「チッ。せっかくシルスナの野郎を追い出したのに景気がわりぃったらありゃしないぜ」 「言えてるわ。アイツのせいで、未だに勇者様はザイルクロス領に来てくださらないしな」 「一目で良いからお姿を見てみたいもんだな。勇者様の生家であるフォトナ領は今頃栄えてんだろうなぁ」 「そりゃそうだろ。なんたって勇者様がいるんだぜ?近日中に隣国の聖女様が会いにくるらしいぜ」 「マジかよ!勇者様に聖女様とか・・・勇者王伝説の再来じゃん!」 「いいなぁ、フォトナ領のやつら。俺らもいっそフォトナ領に移住しちまうか!」 「あはは、それいいな!家内にも相談してみるか!」 彼らは知らない。フォトナ領ではザイルクロス領以上に酷い状況になっていることに。
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