第18話その頃、アルジラは・・・

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第18話その頃、アルジラは・・・

「はっはっは、全く最高だぜ」 まるで城の主と言わんばかりに、我が物顔で俺は王城を歩く。 聖剣に選ばれて半年、全てが俺の思うがままにやりたい放題やれている。 「金も権力も女も全部俺んだ」 俺を疎んでいた貴族も平民どもも、こぞって俺に金を貢いでくる。女だってそうだ。今までシルスナシルスナって騒いでたバカ女どもが、俺を口説こうと躍起になっている。 権力だって、今や俺には王だって逆らえやしない。 「ひゃーっはっははは!」 誰も俺に逆らえない。俺に手に入らない物や女はない。これが笑わずにいられるか? 俺のやることなすことに、イチイチ口を挟んできたシルスナも追放してやった。 前々からシルスナのことは気に入らなかった。 俺と同じ公爵家なのに、なぜか周りはアイツのことばかり評価する。俺の方が全てにおいて、優れているのにだ! 「王国の月だぁ。・・・バカバカしい」 【王国の月】アイツの呼び名だ。アイツの銀髪が月を連想させるのと、決して驕らず、ただただ静かに王国を支えるその姿勢はまさに王国の月だってさ。 バカバカしい!アイツが【王国の月】なら、王国の未来をしょって立つ俺は【王国の太陽】だろ。なのに、誰もその名で俺を呼びやがらない。・・・勇者に選ばれるまではな。 勇者に選ばれて真っ先に思い浮かんだのは、シルスナの追放だ。 アイツがいる限り、俺は評価されない。アイツがいる限り、俺に自由はない。 追放は実に簡単だったよ。そうだよな。勇者の俺に盾突くってことは、王国の民全てを敵に回すってことだもんな。 あの事なかれ主義の王が、そんな危険を冒すわけがない。 「ふはっ、ふはははは」 今やシルスナは、勇者に盾突いた王国の恥扱いだ。 そして、代わりに俺は名実ともに【王国の太陽】だっ! 良いぞ、良いぞっ!今まで乾いていた俺の自尊心が・・・満たされていく。 だが、まだだ!まだ足りない! もっとボンクラどもに金を貢がせないと、もっと女どもを侍らせないと! もっともっともっともっともっとだ! ・・・ ・・・ ・・・ 「・・・そうか。もっと全てを手に入れるには、もう王に成るしかないな」 なんでこんな簡単なことを忘れていたんだ。王に成れば全てが手に入るじゃないか。 俺が王に成るのは、数十年先の話だが・・・もう待てない。もう我慢が出来ない。 「王になって国を手に入れたら、次は他国を手に入れよう・・・そうだ。あの生意気な聖女の国でも攻めるか」 この俺に向かって、「あなたは勇者なんかじゃない!」と言い放って去っていったクソ女。 くそっ、思い出しただけで腹の底が煮えくり返る。顔と体が良いからって調子に乗りやがって・・・ ・・・見てろよ。お前の国なんてすぐに支配してやる。その時のお前の顔が見ものだな。 「・・・さぞや見ものだろうな。そうと決まれば、早急に王に成らないとな」 そうだ。王には隠居してもらう。そもそも勇者たる俺が、未だに王に即位していないことがおかしいんだ。 そうと決まったら、行動は早い方がいいな。 「ククク、シルスナがいなくなってから全てが絶好調だな」 今頃、やつはどうしてる?もうくたばったか? 俺は王になるぞ!惨めなお前は、地面に這いつくばって生きるんだな。 「ふはっ、ふははは!はーっはっはは!!」 俺は、意気揚々と玉座に向けて進む。全ては・・・俺のものだ。
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