第3話神話の森浅層部 戦利品と決意

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第3話神話の森浅層部 戦利品と決意

「・・・いてて。酷い目にあった」 ボクは焚火の前で、擦り傷だらけの身体をさする。 ゴブリン達を相手に大乱闘したせいで、身体中傷だらけだ。まぁ、こうやって生きてるだけでも奇跡だと思うべきなんだろうけどさ。 「まさか本当に勝つとは思わなかったなぁ」 戦利品の兎肉を火で炙りながら、数時間前の出来事を思い浮かべる。 半ばやけくそ気味にゴブリンの集落に突っ込んでいったものの、本当に勝てるとは思ってなかった。 そして、いざ戦ってみると集落のゴブリン達はめっちゃ弱かった。大人と子供・・・いや、象と蟻くらいの差があったと言っても過言じゃないと思う。 それくらい余裕で勝てた。まぁ、数では圧倒的にあっちが多かったから擦り傷はいっぱい出来たけどね。 「あっ、でも最後のでっかいヤツは少しマシだったかな」 ゴブリン達を蹴散らすように倒してると、二回り三回りは大きいゴブリンが怒り狂ったように突進してきたんだよね。多分、群れのボスかそんなだと思う。 最初はそのボスゴブリンのでかさにビビったけど、いざ戦ってみるとこいつもそんなに強くなかった。 蟻が子供になったくらいだった。何合か撃ち合った後に、あっさりと斬り伏せることができたよ。 それを見た残ったゴブリン達は戦意喪失。蜘蛛の子を散らすように逃げてった。ボクとしても、追いかける気はさらさらなかったから見逃した。 まぁ、その代わり集落にあるものを漁らせてもらったけどね。 ほとんど使えないものばっかりだったけど、食糧や使えるものも確保できたから結果的にゴブリンの集落を襲って正解だったと思う。 「おっ、焼けたかな。はふはふ・・・うめぇ」 ・・・うめぇ。味付けなしでタダ焼いただけなのに、めっちゃ美味いんだが、止まらないんだが。 ただ焼いただけの肉に夢中でかぶりついてしまう。 「・・・ふぅ。美味かったわ。でも、ちょっと足りないな」 焼いた肉はあっという間に、ボクのお腹の中に消えていってしまった。でも、ボクのお腹を満たすには足りなかった。 だって十八歳。食べ盛りなお年頃だからね。仕方ないね。 「もう一枚だけ、もう一枚だけで終わりだから」 ボクは自分に言い訳するように、右手の人差し指に嵌めた指輪から追加の兎肉を取り出し火で炙る。 何で指輪から肉が出てくるんだって? そう!なんとこの指輪、アイテムボックス機能があるのだ!今日一番の収穫と言っても良いだろう。でっかいゴブリンが持ってた。 アイテムボックスは低級から上級まであり、品質によってボックスの内容量に差が出てくる。この指輪は容量が大きいから、かなり質の高い魔道具なんだと思う。 まぁ、所持してたゴブリンは使い方を分かってなかったみたいだけど。ありがたくボクが有効活用させてもらおう。 「でもこの指輪の存在はありがたいな」 アイテムボックスが手に入ったおかげで、食糧問題が一気に解決したようなもんだ。 ゴブリンの集落のおかげで、ある程度の食糧は手に入ったは良いものの。肉とか生ものは日持ちしない為、二、三日もしたら腐ってしまうからだ。 でも、アイテムボックスに収納してる間は食糧が腐る心配はない。このサバイバル生活で、一番の懸念だった食糧問題が解決したことで、ボクの心にも大分余裕が出てきた。 しかしそれと同時に、考えたくないことも考えてしまう。 「・・・みんな今頃何してんのかなぁ」 ボクを追放したアルジラ、そしてボクを見放した王様や両親そして領民達。今や思い出したくもない顔ぶれだけど、昨日までは愛すべき存在だったのには違いない。 考えたくなくても、ついつい考えてしまう。 「ボクがいなくてもやっていけてるのかな」 これだけを聞けば何様かよと思うかもしれないが、本当にそう思ってしまうのだ。 だってアルジラに関しては、フォトナ公爵家の権力はとても強く例え王族でも強く言えないほどだ。そんな家の権力を笠に、やりたい放題してたアルジラを唯一諫めることが出来たのはボクだけだ。 しかも、今回の件で勇者になったアルジラは、もっとやりたい放題ふるまうようになるだろう。そうなった時どうするつもりなんだろう? うちの家・・・ザイルクロス公爵家とザイルクロス領についてもだ。 ボクは二年前から、父上から公務を全て引き継いでる。自慢じゃないけどボクが仕事を引き継いでから、領地はかなり豊かに潤った。 今更父上が公務に戻ったとしても、今の状態を維持することすらできると思えない。というか大きな事業をやってる途中で追放されたけど・・・その事業のこと父上知ってるのかな? 「まっ、どうでもいっか」 今更、ボクが心配したとこでどうしようもないし、何より心配すること自体がバカらしい。 ボクは、焼きたての肉を齧りながら考えることをやめた。 「そうだ。これを機に自分勝手に生きてみるものアリだな」 ボクはボクの為に時間を使ったことがほとんどない。次期公爵としてみんなの期待に応え、見られても恥ずかしくないよう常に立ち振る舞ってきた。 貴族として上に立つ者としては、当然のことなんだけど・・・自分勝手に生きるか。めちゃくちゃ魅力的に感じてしまった。 「・・・決めた。エスバー共和国に着いたら、自分のやりたいようにやってみよう」 いまさら失うモノなんて何もないし、自分勝手に自由気ままに生きてみよう。そうだ。冒険者みたいな着の身着のままな生活もやってみたいな。 学園で聞いただけだけど、冒険者っていう職業は好きな時に働いて好きな時に休むことが出来るらしい。最高かよ。 「まぁ、今は明日に備えてもう寝るか」 追加の肉を食べ終えたボクは、たき火に十分木をくべ明日の為に休むことにした。
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