119人が本棚に入れています
本棚に追加
第32話キラービー②
「へぇ、シルスナさんシルバーランクなんだ・・・俺らとあんまり変わらないのにすげぇ・・・」
「だねぇ。俺たちも頑張らないと」
「ゴブリン達にやられそうになった私たちとは、雲泥の差よねぇ・・・」
「「・・・うっ!」」
「まぁまぁ、アンバーもそうイジメてやるなよ」
「だってぇ!私はこの森はまだ実力的に無理って何度も言ったのに・・・お金になるからって無理やり・・・」
「「・・・うぅっ!!」」
「ははは、そりゃ責められても仕方ないわなぁ」
「「そんなぁ~」」
「当たり前よっ!」
ご立腹のアンバーに、項垂れるダーツとロケ。
結局、俺はこの三人組の冒険者パーティー『揺るぎない光』と一緒に行くことにした。
これも何かの縁だし、一期一会って言うしね。
「それにしても、シルスナさん。どうやってシルバーランクに昇格したんですか?」
「しかもソロで!」
「あー、ずっとデカ兎・・・キングサヴァナラビットだっけ?あれを納品してたら、いつの間にか昇格したなぁ」
「「「キングサヴァナラビットっ!?」」」
いちいちリアクションがデカいなこいつら。
でも、不思議と嫌な気分はしないんだよなぁ。
・・・よくよく考えると国を追放されてから、こんな大人数で和気あいあいとお喋りした記憶がないな。
あー、俺楽しんでるのか。そっかそっか。
「・・・おい、キングサヴァナラビットってあの幻の魔物だよな?」
「ゴールドランク対象だぞ・・・」
「・・・シルスナさん、実は私たちが思っている以上にすごい・・・?」
このヒソヒソと会話してる三人組は、俺よりも二つ年下の十六歳だった。
何でも幼馴染同士でアルド付近の寂れた農村に住んでたけど、一念発起して冒険者デビューしたそうな。
喜び勇んで冒険者になったものの上手くいかず、低報酬の依頼をこなして細々と暮らしてるのが現状らしい。
世の中って世知辛いね。
・・・ブゥゥゥゥウン、ブゥゥゥウンッ
んん?遠くから微かに虫の羽音が聞こえるな。
果物よりも蜂の方を先に引いたか?何によ、音がする方に行ってみるかな。
「なぁ、キラービーってあれのことか?」
音のする方へ行った結果、三十センチ大の蜂が無数に羽ばたいている場所に着いた。
・・・これがキラービーなのか?キラーなんて御大層な名前が着いてる割には、小さい気がする。
「き、きき、キラービーだぁ・・・でっかい・・・」
「えっ!?」
えっ?デカい・・・あれが・・・?
あんなサイズの虫なんて、神話の森だと極小サイズも良いとこだよ。
「しかもキラービーの巣まで・・・逃げようぜシルスナさん!数が多すぎるっ!!」
「・・・えぇっ?」
・・・そんなに多いか?たかが四、五十匹くらいじゃん。
「・・・ブクブクブク」
「・・・えぇぇ~」
アンバーに至っては、泡吹いて気絶してしまった。
まぁ、女の子は虫が苦手だからね・・・俺も女の子に虫の肉食べさせて、怒らせたことあるから・・・女の子に虫は厳禁、ダメ、絶対。
それにしても、あのサイズがでかいのか・・・
神話の森って、もしかして結構ヤバいとこだったりするのか・・・?
「まっ、とりあえず狩るか。お前らは、その辺で適当に隠れてな。エイス、ボーズ。三人を守ってやってくれ」
「「そ、そんなシルスナさんっ!」」
俺は二人の制止を無視して、蜂の巣に向かって歩き出す。
なぜなら、もう既に俺の目は蜂の巣にロックオンしているからだ。
蜂の巣ってことは・・・蜂蜜があるってことだろ・・・?
普通の蜂蜜でさえ高級品なのに・・・魔物の蜂蜜って・・・どれだけ美味いんだ・・・ジュルリッ。あっ、やべ。ヨダレでた。
「「「「カチカチカチカチカチ」」」」
俺が蜂の巣に近づくにしたがって、蜂どもがアゴをカチカチ言わせてくる。
多分あれだ、これ以上近付くな的な警告みたいなもんなんだろうな。
まっ、それでも進むんですけどねー。
「「キシャー!!」」
「よっ!ほっ!」
「「キシャッ!?」」
「んー、ゴブリン以上オーク未満ってとこかなぁ・・・?」
襲い掛かってくる蜂を次々に打ち落とす。
ははっ、向こうから来てくれるから、こりゃ倒しやすいな。
「キシャー!」
「ほっ!」
「キシャー!」
「ほいっ!」
・・・何だかリズムゲームやってるみたいで楽しくなってきたぞ。
「す、すげぇ・・・」
「あのキラービーがあんなに簡単に・・・」
木陰からダーツとロケの声が聞こえてくる。
そんなに驚くことなのかな?シルバーランクレベルの魔物だし、他のシルバーやゴールドの冒険者でも普通に狩れるんじゃないか?
「ギジャアアアアッ!!」
「おぉっ?」
向かってくる蜂をあらかた叩き落したら、一回り・・・いや二回りほど大きい蜂がやってきた。それでも一メートル程度の大きななんだけどね。
しかし、何かめちゃくちゃ怒ってる。この蜂の群れのボスかな?
「き、キラークィーンビーだっ!」
「し、しし、シルスナさん逃げ・・・」
「ギジョァァァアアアアッ!!!?」
俺は瞬時に蜂の懐へと入り込み、その腹へボディブロウをかます。
蜂は絶叫を上げながら吹き飛び、木に激突した後動かなくなった。
「・・・えっ?何か言った?」
「「・・・はぇっ?」」
俺は蜂を殴り終えた後、二人の方へと振り返る。
・・・さっき声かけられたような気がしたけど、気のせいか?
「今ので倒したみたいだな・・・さって、お目当ての巣はどうかな?」
でっかい蜂を指輪で収納し、俺は意気揚々と蜂の巣へと向かう。
大本命の蜂の巣、蜂蜜あるといいなぁ・・・
「・・・えっ?キラークィーンビー・・・えっ?」
「あれってゴールドランク対象の魔物じゃ・・・えっ?」
さっきからダーツとロケが呆けた顔してるけど、大丈夫か?
見た感じケガはしてなさそうだけど・・・まぁ、いいや。今は蜂蜜だ蜂蜜。
「それじゃ、御開帳っと・・・おおおおおっ!」
蜂の巣を無理やり真っ二つにこじ開けると、そこには黄金色の蜜と幼虫が・・・
「やったあああああ!蜂蜜だぁぁぁああっ!!」
「クルックルッ♪」
「ボァッ♪」
「ウホッ♪ウホッ♪」
俺はあまりの嬉しさに、歓喜の舞を踊る。
エイスとボーズにも俺の喜びが伝わったのか、一緒になって踊ってくれる。
後ゴリラ、お前は引っ込んでろ!今出てくると紛らわしいことになるだろっ!!
「・・・ウホッ」
シュンッとした表情で、籠手に戻るゴリラ。
・・・ちゃんと後で蜂蜜あげるから、そうしょげるなよ。甘党なゴリラが、一番喜んでるのはちゃんと分かってるからさ。
「よし、蜂蜜は回収だ・・・幼虫も・・・回収だっ!」
俺は蜂蜜を指輪で一滴残らず回収する。こういう時、アイテムボックスって便利よな。瓶とかなくても回収できちゃうんだもん。
ついでに、蜂の巣の中にいた幼虫も回収する。俺の経験上、ワーム系は・・・美味い!きっとこの真っ白でプヨプヨした幼虫も、美味いに違いない!
「あー、この小さい蜂は・・・一応、回収するか」
小さいけど食べれるとこあるかもしれないしな。うん。一応、回収するだけしとくか。ギルドに提出しないといけない部位もわからんし。
「さて、後はリンゴと梨だな!案内頼めるか?」
「は、はいっ!」
「お、俺たちでよろしければっ!」
「 ?まぁ、よろしく頼むわ」
ダーツはともかく、ロケが敬語になってる。それに二人とも神妙な顔してるけど、どうしたんだ?
最初のコメントを投稿しよう!