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第33話久々の野宿
「すいません。俺らに着き合ってもらって・・・オマケに食事まで・・・」
「いいよいいよ。俺も楽しんでるから」
「何だこれうめぇ!シルスナさんこれうめぇ!」
「ロケっ!もうちょっと静かに食べなさいよっ!」
「ははは、まだいっぱいあるから食べな・・・って言っても作ったのはアンバーだけどな」
「道具から材料まで、シルスナさんが出してくれたじゃないですか。私は作っただけですよ」
無事に蜂の討伐と蜂蜜やら果物やらをゲットした俺は、『揺るぎない光』ことダーツ・ロケ・アンバーの三人組と一緒に街まで帰ることにした。
三人のペースで歩いてたらあっという間に日が暮れちゃって、街道沿いで野宿することになった。
行きは遊びながら走ってたから気付かなかったけど・・・結構遠かったんだな。
そんなわけで、今俺らは火を囲んで晩飯を食べてる。
指輪に調理道具一式入れといてよかったわ。何事も備えあれば患いなしだね。
「しかし、アンバーは料理が上手だなぁ」
「私、昔から料理が好きなんです」
「アンバーは店を出すのが夢なんだよね」
「ははっ、村にいた頃から言ってたもんなー」
「うっさいわね!私の夢なんだから良いでしょっ!」
ギャーギャー騒ぐ三人組を眺めながら、俺はアンバーの作った料理を食べる。
フライパンで草と肉を一緒に炒め始めた時はビックリしたけど、焼き方も味付けもすごい良くてとても美味しかった。
「草を使ってた時はビックリしたけど、とても美味しかったよ」
「えへへ、ありがとうございます。あの草は肉の臭みを消す効果があって、私たちのいた村では普通に使われてる調理法なんですよ」
「へぇ、初めてしったわ」
「貧しい村だったから、たまに食べれるお肉も鮮度が悪いものばかりで・・・」
「懐かしいなぁ、肉を喜んで食べてはお腹壊してたわ」
「そんな生活が嫌で冒険者になったけど・・・相変わらず貧乏なんだよねぇ・・・」
村の思い出をしみじみと語る三人組。・・・結構苦労してたんだなぁ。
「・・・そ、そうか」
「でも俺らの村はまだマシな方ですよ。何だかんだで毎日ご飯は食べれてましたからね」
「ほぼ水みてぇなスープと硬いパンだったけどな」
「それすらもない時は、そこらに生えてる雑草を煮詰めて食べた時もあったわよねー」
・・・俺の思ってる以上に、村の生活ってキツいんだなぁ。
追放されたけど、俺って何だかんだで恵まれてたんだよな。そういえば、実家は今頃どうしてるのかな?
父上って商才ないし強引な所があるから、執事長を困らせてそうだな・・・
「そういえば、シルスナさんはどこの生まれなんですか?」
「あっ、それ私も気になってた。何て言うか気品があるしイケメンだし・・・もしかして良いところの人だったりしてっ」
「あ、あぁ、俺はジルフィール王国から来たばっかりなんだ。生まれは別に平民の子だよ。旅がしたくて冒険者になったんだ」
「ジルフィール王国って、あの勇者が現れたって噂の?」
「平民でこんなにイケメンだなんて・・・ジルフィール王国ってイケメン揃い・・・?」
「でも今、あの国ってあまり良い噂聞かないよな」
とりあえず俺が貴族ってのは誤魔化すことにした。
今の俺はタダのシルスナだし、貴族ってバレると色々と面倒なことになりかねないしな。
・・・それよりも、勇者の件はもうエスバーにまで伝わってるのな。
良くない噂も、どうせアルジラ関連なんだろうなぁ。
「どんな噂なんだ?」
「えぇっと、確かこの前行商の人から聞いたんだけど。お貴族様も平民も勇者様に貢物をするのに躍起になってるんだってさ」
「・・・貢物?その勇者が、強要してるとかじゃなくて?」
どういうことだろう。何だかロケの話を聞くと、みんなが進んでアルジラに貢物を献上してるように聞こえるんだけど。
「自発的にやってるみたいだよ?噂では少しでも金を作る為に、自分の子供すら売り払ってるとか」
「あっ、それ私も聞いたことある。ジルフィール民が狂気的で怖くなって、アルドにやってきたって商人の人が言ってたわ」
「俺は街に堂々と盗賊がたむろしてるって、旅の冒険者から聞いたことありますね」
「・・・マジか」
何やってんだ、ジルフィール王国・・・
三人の噂話を聞き、俺は頭を抱える。もちろん所詮は噂話、鵜呑みにするわけにはいかないけど、もし本当だったらかなりヤバい。
子供売るって言うのは信じたくもないけど、商人が逃げだしてるってのはマジでヤバい。経済死ぬやん・・・
「まっ、俺らが考えても仕方ない。さっさと飯食べちゃおうぜ」
「ははは、そうですね」
「温かいうちが一番美味しいものね」
俺は考えることをやめて、飯に集中することにした。
だって、今更俺に出来ることなんてないもん。アルジラと王族が何とかするさきっと。
「そういえばシルスナさん。この肉めっちゃ美味いんだけど、何の肉なんだ?」
「ん?牛・・・サヴァナカウの肉だな」
「「「ぶっ!!?」」」
「うぉっ、汚ねぇな!」
突然、口の中の残差物を噴き出す揺るぎない光の面々。
きったねぇなぁ・・・服にちょっとかかったじゃん・・・
「さ、ささ、サヴァナカウ・・・」
「サヴァナカウだな」
「・・・どうしよう食べちゃった」
「いや、普通に食べていいぞ?」
「高級肉だ・・・初めて食べた・・・」
「そうなのか?」
あー、そういえばこの肉、高級品だったな。焼肉パーティーの時に、受付嬢さんも滅多に食べれないって言ってたな。
こいつら貧乏だしな、食べ慣れてないか。
「し、シルスナさん・・・」
「どうした?」
「俺たちお金ないんですけど・・・」
「いやいや、金なんて取らないよ。いいから食えっ」
「「「ありがとうございますっ!」」」
この状況で金取るとかどんな鬼畜だよ・・・
いや、その用心深さは冒険者としては大切な感覚なのか?
「これが・・・夢にまでみたサヴァナカウ・・・うめぇ・・・」
「もっと味わって食べればよかった・・・」
「これ一切れで、私たちの一ヶ月分の稼ぎなのよね・・・」
厳禁な奴らだな。さっきまでガツガツ食べてたのに、急にチビチビ食べ始める三人に苦笑する。
まぁ、分かるよ。美味いモンは自然と食べるスピード早くなるよね。
「ふぁぁ・・・」
「おっ、眠くなったか?」
「・・・久々にお腹いっぱい食べたからつい」
満腹になったアンバーが眠そうにあくびしてる。
腹いっぱい食って、更に食後の一杯までやってたらそりゃ眠くなるのも無理ないわな。
ちなみに、食後の一杯って言ってもお酒じゃないよ。こないだギルドマスターのとこで飲んだ紅茶だ。
あの紅茶美味しかったから、俺もついつい買っちゃったわ。でも美味しいだけの値段はするのな。結構高かった。
「もうだいぶ暗くなったし、そろそろ寝るか」
「あっ、俺とダーツで見張り番やるよっ!」
「俺らに任せてください!」
「お前らも寝て大丈夫だぞ」
「えっ?いや、でも・・・シルスナさんに見張り番をさせるのは・・・」
「いやいや、俺も寝るよ?」
「・・・えっ?」
「えっ?」
・・・えっ?すっごい目が点になってるけど、俺何か変なこと言った?
「・・・あのシルスナさん。見張り番なしでみんな寝るのは危険だと思うんですけど」
「そうだぜ!ここらは割と安全だけど、魔物や盗賊が出ないわけじゃないし・・・」
あぁ、そういうことね。ダーツとロケは、寝込みを襲われる心配をしてたのか。
「そこは問題ないよ。寝てても魔物の気配を感じたら、間違いなくエイスとボーズが反応するし俺も気付くからな」
「クルルッ!」
「ボッ!」
「・・・何かシルスナさんって本当に規格外ですね」
「シルスナさんが言うと本当に聞こえるから不思議だわ」
・・・そんな遠い目をされても、出来るもんはしょうがない。
それに森での暮らしは、食うか食われるかの弱肉強食の世界だ。寝てても気配を察知するくらい出来ないと、速攻で食われてこの世からおさらばだしな。
「まぁ、そんなわけだ。今日は安心して寝ていいぞ。エイスとボーズは、一応念のためにアンバーについてやれ」
「・・・ふぁぁ、エイスちゃんボーズちゃん。一緒に寝よ」
「クルッ!」
「ボッ!」
「・・・あはは、それじゃお言葉に甘えます。正直に言うと俺も満腹で眠かったんです」
「俺も俺も!あんな美味い肉をお腹いっぱい食えて幸せだったなぁ」
「ふふ、素直でよろしい。それじゃ、お休み。明日は朝一で街に帰るぞ」
「「「おやすみなさいーい」」」
火を囲い、それぞれ眠りにつく三人組。
・・・たまにはこういうのも良いもんだな。何か追放されて久々に人と深く接した気がする。
あっ、ボラさんもいたな。今度ボラさんに会いに行くのも良いかもな。
「俺も寝るか」
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