119人が本棚に入れています
本棚に追加
第41話集結する冒険者たち
「何だこれっ!ウンコじゃねーかっ!!」
「こんなの食えるかっ!」
「ボッタクリじゃねーかっ!!」
「・・・はぁ、またか」
四ヶ国間合同ゴブリン掃討戦が発表されて、避難した住民・去っていた冒険者も多かったけど。その分、腕に覚えのある冒険者や傭兵団が、掃討戦に参加すべくアルドに集まって来ている。
そしてそんな荒くれものの冒険者が集まれば集まるほど、揉め事も日に日に増えていってる。
ここのカレーは美味いけど、見た目がウ・・・アレだから、難癖付けられやすいんだよね。気持ちは分からんでもないけど店主や常連の俺からしたら、こんなことでイチイチ騒がれてもめんどくさいことこの上ない。
「またアルカ・・・シルスナ、頼んだヨ」
「はぁ、分かったよ。ちゃんと約束は守れよ?」
「わかてるヨ。魚三切れサービスするヨ」
「・・・なら良いけどさ」
一回の揉め事解決に付き、魚三切れ。これが俺と店主の間で交わした契約だ。
相手は腐っても冒険者。しかも、自分の腕に自信を持ってるやつらだ。
そんなやつらを、店主が相手に出来るわけもない。そこで、俺の出番ですよ。
「店主出てこいやっ!てめぇ、客にウンコ食わせる気かっ!!」
「まぁまぁ、見た目はアレだけど美味いからさ。騙されたと思って食べてみなよ」
「あぁんっ!誰だてめぇ!こんなウンコが食えるわけねぇだろ!」
「とりあえず食べてみなって」
「うるせぇ!誰がこんなウンコ食えるか!てめぇのウンコでも食って・・・」
「ウンコウンコうるせぇんだよ!黙って食えっ!!」
「ブヘバッ!?」
あっ、やべ。ウンコウンコ連呼するから、ついつい張り倒しちゃった。
だいじょ・・・ばないなコレ。白目剥いて気絶してるわ。
「「「・・・」」」
「・・・ん?」
「「「・・・!?(サッ)」」」
「Oh・・・」
さっきまで文句を垂れてた冒険者たちが静かになった。
静かになったのは良いけど、誰も俺と目を合わせようとしてくれない。
・・・何だこの空気。どうしろってんだ・・・
「・・・お前ら、ピーピー言わずに黙って食え」
「「「ヒッ、ヒェッ!?」」」
必死にカレーを掻き込む冒険者たち。
いや、違う!そうじゃないっ!俺の言い方も悪かったけど、そうじゃないんだっ!
「「「ご、ごちそうさまでしたーっ!」」」
味わう所か必死にカレーを掻き込み、食べ終わた冒険者たちは一目散に店から逃げるように出ていく。
・・・違うんだよ。俺は一口食べたら、カレーの良さが分かるよって言いたかっただけなんだ・・・
「シルスナ、ありがとネ。これはお礼ヨ」
「・・・店主、すまん。追い返してしまった」
「別にいいネ。アイツラはどうせこの仕事おわたら、いなくなるネ」
店主が魚増量のシーフードカレーを、俺の元に運んでくる。
あまりの申し訳なさに、店主に謝るが店主は笑って許してくれた。
・・・店主の優しさがあったけぇ。
この人、言葉遣い変だし頭に変な布グルグル巻いてるけど、対応はめっちゃ大人だよな・・・正直、憧れるわ。悔しいから言わないけど。
そして、カレー相変わらずうめぇな。
「シルスナは、この後どうするネ?」
「あー、そういえばギルドマスターに呼ばれてたんだったわ」
「そうカ。ならシルスナが食べ終わったら、店閉めるヨ。またよろしく頼むヨ」
「わかった。また明日も来るわ」
忘れてたわ。ギルドマスターに呼ばれてたんだったわ。
とりあえず、このカレーを堪能してからギルドに顔出すかー。
「相変わらずうめぇ!」
「フフフ、カレー四千年の歴史アルヨ」
「うそこけ!」
・・・
「おーおー、殺気立ってるねぇ」
俺は冒険者ギルドにいる冒険者たちを見渡す。
恐らくアルドに来たばっかりであろう冒険者たちが、お互いけん制し合って睨み合ってる。
・・・お互いの実力を測ってるのかな?自然界では良くあることだよね。
「あっ!シルスナさんっ、お待ちしていました」
俺に気付いた受付嬢さんが、大きな声で俺に声をかけてくる。
おぉっ!ギルド内の視線が、一気に俺に集まったな。中には嫉妬丸出しのやつまでいる・・・受付嬢さんモテるからなぁ。
「ギルドマスターに呼ばれてきたんだけど」
「承っています。ギルドマスター室へどうぞ」
「ありがと」
ここで受付嬢さんとお喋りしても変に絡まれそうだし、さっさとギルドマスターに会いに行くか。
「こんちゃーっす」
「・・・ようやく来たか。そこに座りたまえ」
「はーい」
ギルドマスター室に行くと、若干眉間に皺を作っているギルドマスターに促されてソファーに座る。
おっ、ソファーに先客がいる。
ムッキムキのツルツルなおっさんと、魔法使い風なお姉さんが座ってるけど・・・二人とも眉間に皺寄せて俺を見て・・・いや、睨んでるな。
えっ、何で怒ってるの?初対面だよね?
「さて、全員揃ったな。・・・そうだな。まずはお互い自己紹介でもしようか。私が冒険者ギルドアルド支部ギルドマスターのアルベルトだ」
「・・・チッ。『鋼の斧』の代表、ゴードンだ。ランクはプラチナだ」
「『深淵の園』のイザベラよ。ランクはプラチナね」
「シルスナだ。ランクはシルバーだ」
「・・・シルバーだぁ?」
ハゲが俺バカにしたような目で俺を見る。横にいるお姉さんも、訝しむ目で俺を見てるな。
・・・何か感じ悪いなコイツら。
「要件を手短に話そう。君たちに集まってもらったのは、ゴブリン掃討戦に関してだ。鉄の斧と深淵の園には、冒険者の陣頭指揮を執ってもらいたい」
「ふんっ、妥当な選択だな」
「あら、私は一人で指揮を執っても構わないのだけど」
「なんだと!若作りの婆がっ!」
「・・・なんですって?死にたくなかったらその汚い口を閉じなっ!」
・・・こいつら、さっきからピリピリしすぎじゃない?
ハゲは筋肉が隆起してるし、お姉さんは魔力がダダ洩れてる。いつでもおっぱじめられますって感じの、一触即発の状態だ。
「落ち着きたまえ。今回の作戦は、二手に分かれて行う必要がある。なので必然的に、指揮する人間が二人必要なのだよ。それにどうせ争うなのなら、冒険者らしく功績で争いたまえ」
「・・・ケッ」
「・・・ふんっ」
おぉ、さすがギルドマスター。口だけで上手いこと、二人を抑え込んだな。
「それで、俺は何で呼ばれたんだ?」
その場が落ち着いた所で、俺はギルドマスターに疑問を投げかける。
冒険者のまとめ役は、そこのハゲとお姉さんがやるんだろ?
俺が呼ばれた意味が、ちっとも分からないんだけど。
「あぁ、君か。・・・君は単独行動だ」
「・・・ん?」
「君は自由に行動して良いということだ。自分の動きたいように動けば良い」
「・・・そうか?わかった」
えーっと、つまり・・・どういうことだ?
それだけ伝える為に、俺を呼んだのか?
「ちょっと待て!」
「どうかしたのかね?ゴードン殿」
「なぜシルバーランクの小僧を特別扱いする。気に入らねぇ」
「口惜しいけど、私も鉄の斧に賛同するわ」
「・・・ふむ」
どうやらハゲとお姉さんは、俺が気に入らないらしく難癖をつけてくる。
「ゴードン殿、イザベラ殿。お二方は、神話の森でキングベアを単独で狩れますかな?」
「何を・・・無理に決まってるだろ。むしろキングベアのテリトリーに行くまでに、団員の半数は死ぬだろうな」
「・・・ふむ。イザベラ殿は?」
「・・・無理ね。ウチは魔法使いで構成されているから、そもそも森の奥には行けないわ」
「ふむ。なるほど」
「それがどうしたっつーんだよ!」
「・・・回りくどいのは辞めてくださる?」
おぉ、ギルドマスターの勿体ぶった喋り方に二人とも苛ついてる。
っていうか、あのクマそんなに強いか?
「彼は単独で神話の森へ入り、キングボアの討伐に成功しています」
「・・・はぁ?はっ、冗談キツいぜギルドマスターさんよぉ」
「全くだわ。冗談も大概にしてほしいわね」
「事実です。シルスナ君。キングボアの素材を出してくれないかね」
「まぁ、出すくらいなら別にいいけど」
「「なっ!?」」
俺は指輪から、熊の爪・牙・毛皮を適当にテーブルの上に置く。
テーブルに置かれた素材を見て、ハゲとお姉さんは信じられないといった表情で驚いてる。
「・・・本物だな。それもこの量」
「・・・信じられないわ。少なくとも五体分はあるわ」
「これで信じて頂けましたかな。御覧の通り彼は、キングボアを狩れるほどの猛者です。下手に部隊に組み込むよりかは、自由に動いてもらった方が都合が良いのですよ・・・彼の性格も含めてですね」
ちょっと待って。何か俺の性格に問題があるみたいな言い方だったけど、どういうこと?
「・・・いいや。俺は信じねぇ」
「・・・ゴードン殿?」
おっ、ハゲがゴネ出したぞ。流石のギルドマスターも、ちょっと呆れた表情でハゲを見てる。
「俺はこの目で見たものしか信じねぇ。この小僧の実力を確かめさせろ」
「・・・おや、仕方ありませんねぇ」
ちょっと待って。ハゲが何か言い出したよ?
そして、ギルドマスターは何で自分のことのように返事してるの?
「小僧、表に出ろ。てめぇの実力を試してやる」
「・・・私も彼の実力次第では、認めないこともないわ」
「ふふふ、お手柔らかに頼みますよ」
お手柔らかに頼みますじゃねぇよ!だから何でお前が返事するんだよっ!
「さぁ、シルスナ君。彼らに身の程を知らせてやりたまえ」
・・・こいつ、ぶっ飛ばしても良いかな?
最初のコメントを投稿しよう!