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第5話神話の森中層部 進んだ先はすごくやばいとこだった。
「・・・やっぱり来ないな」
魔物を倒したけど、その後に訪れる強くなった感が全く来ない。
ジルフィール王国とエスバー共和国の国境にある森(名前は忘れた)に入って早二週間。
魔物の肉に味を占めた・・・いや、強さを求めたボクは目につく魔物は片っ端から狩って、そして食べた。
「あのでっかいミミズみたいなのが一番美味かったなぁ・・・」
ゴブリン・フォレストウルフ・魔法を撃ってくる鳥・・・色んなタイプの魔物がいたけど、一番美味しかったのは魔法で岩の塊を飛ばしてくるでっかいミミズだった。
一見するとそこら辺にいるミミズを一メートルくらいに大きくした魔物で、見た目はとても気持ち悪かった。けど、食への探求心を抑えきれなかったボクは・・・食べた。
・・・衝撃だったね。分類的には虫なのに、味はとても濃厚でクリーミーだった。食感もハンバーグを食べてるみたいで、とても食べやすかったし。味と見た目は関係ないんだね。勉強になったわ。
そうなると実はゴブリンも案外美味いのか・・・?いやいや、あれはまだ抵抗あるな。いや・・・でもいずれは・・・
「また狩るか・・・って、今はそれ所じゃないな」
ボクは頭を振って、脳内に満たされてる食欲を無理やり散らす。
昨日あたりから、魔物を倒しても強くなった気がしないんだよね。最初は気のせいかと思ってたけど、その後数体の魔物倒しても来なかったから気のせいではないことだけはわかった。
「ボクの成長限界ってことか?それとも、条件があるのかな・・・」
原因は分からないけど、色々と推測はしてみた。
まず考えられるのは、ボクが限界まで成長しきったと言うこと。
今のボクは、言っちゃなんだけど滅茶苦茶強くなった。最早、魔物の方がボクにビビって避けて通るくらい強くなった。成長限界だったとしても納得できる。
他の可能性を考えると、同じ種類の魔物に回数制限がある。格下の魔物は対象外ってとこかな。
正直、そんなゲームみたいなことある?とも思ったけど、魔物を倒して強くなること自体が、ゲームみたいなもんだから否定しきれないんだよねぇ。
「・・・考えても仕方ないし、先に進むかねぇ」
どれも確証が得られないし、そんなの考えるだけ考えても仕方ない。そもそも、ここまで強くなれたこと自体が奇跡的だし、儲けモノと考えるべきだろう。
魔物が美味しすぎてついつい忘れてたけど、ボクの目標はエスバー共和国だ。これを機に、先に進むのも悪くない。
本来はこんなに森に長居する気はさらさらなかったんだけどね。ボクが強くなったことと、指輪のおかげで不便だったはずの森生活がとても快適なものになっちゃったんだよね。
食糧である魔物はそこら辺にうようよいるし、ゴブリンの集落を襲えば冒険者のものと思しきアイテムをゲットできるし。ぶっちゃけ、ここにずっと住める自信があるわ。
「何か小腹が空いてきたな・・・うーん!甘い」
ボクは、指輪から白と赤の実を数粒取り出し頬張る。白い実は味はしないけどミントのような爽やかな香りが鼻を抜け、赤い実はとても甘いけど後味が悪すぎる。
そこでボクが編み出しのが二つ同時食いだ。この二つの実を食べることによって、赤い実の甘さを楽しみ、後からくる悪い後味をミントの香りで打ち消すという画期的な技だ。食べた時にちょっと舌がピリっとするけど、それさえ我慢すればこの森でとても貴重な甘味だ。それくらい我慢できる。
ちなみにこの二つの実は、ゴブリンの集落で見つけた。奴らも甘いものが好きなのかもな。
なぜか実をすり潰した果汁を武器に塗り付けてるやつもいたけど、甘党を拗らせのかな?勿体ない。
「まぁ、明日から先に進むか~」
おっと、また思考が食の方へとまっしぐらしてしまった。いけないいけない。
とりあえず明日から先に進むとして、今日はもう拠点に戻って夕食の準備でもするかね。
「おいおいマジかよ・・・」
早朝から森を進み始めて数時間。森の空気が明らかに一変したのを感じる。まるで、最初に森に入った時の緊張感と不安感が襲い掛かってくる。
数時間前は、手に取るように分かってた魔物の気配が一つも感じることができない。本能がここは危険だとガンガンに警報を鳴らしてくる。
「これは気を引き締めないとな」
正直、舐めてたわ。あっという間に強くなって、この森の主になった気でいたけど勘違いだったみたいだわ。
ここから先は、今までいた森とは別次元の世界だと考えた方がいいな。さっきから背筋がゾワゾワする。
一瞬でも気を抜いたらやられる感じがする。
「それにしても、気配が分からないのが辛いな」
最新の注意を払いつつ先を進むが、魔物の気配が全く感じ取れないせいで少しずつしか進めない。
おまけに、いつ魔物が襲ってくるか分からない緊張感のせいで気力がガンガンすり減っていくのを感じるわ。
「むっ、あれは・・・オークか?」
森の中を慎重に進んでいると、三匹の豚の頭をした魔物を見つけた。多分オークだと思う。
「・・・やるか?いや、もうちょっと様子を見よう」
幸いなことにオーク達はボクに気付いていない。いつぞやのゴブリンのように、奇襲を仕掛けようと思ったけどボクは思い留まる。
オークの実力も分からないし、おまけに三匹もいる。奇襲が失敗して取り囲まれたら・・・ちょっとリスクがデカすぎる気がする。戦うにしても、相手の様子を観察してからでも遅くはない。
「ブヒブヒッ」
「ブギギ?」
「ブビビッ」
「「ブッギッギッギ」」
「・・・何やってんだアイツら?」
オーク達は仲良く談笑してるのか、ご機嫌にゲラゲラ笑ってる。
・・・すんごい隙だらけなんだけど。これなら倒せそうな気がするなぁ。人型だけど頭は豚ってことは、豚肉みたいな味がするのか?やべ、倒せそうと分かったら食欲が・・・
「いっちょ不意打ちかまして・・・えっ?」
「ブギョッ・・・!?」
「プギッ?」
「プ・・・ギャ・・・」
「プギッ!?ブギギッ!?」
オーク目掛けて飛び掛かろうとした瞬間、反対側の茂みから一閃が見えた。その瞬間、オーク二匹の胴体がずるりと落ちる。生き残ったオークは、何が起きたかわからずパニックを起こしている。
危険を感じたボクは、茂みから乗り出した上半身を引っ込め息を潜め様子を伺う。
「やべぇ・・・全く気配も何も分からなかった」
ボクは荒い呼吸を何とか抑え、気配を押し殺すことに集中する。あれに見つかったら、間違いなく逃げれない。
「ブヒブヒッ!・・・ブフッ!?」
「うぉ・・・あんなのもいんのかよ」
武器を構え臨戦態勢を取るオークの前に、とても巨大なカマキリの魔物が現れた。
二メートルはあるオークが、小さく見えるほどだ。そして昆虫特有の外皮や節足に、強い嫌悪感や恐怖心を植え付けられる。
「あんなデカい虫とか・・・反則だろ・・・」
ボクは優に三メートルを超えるカマキリに絶望する。一メートルのミミズの時も気持ち悪かったが、今回のカマキリはもっと気持ち悪い。ザ・昆虫のフォルムをそのままに巨大化したカマキリは、人間の本能に刻まれてる虫への忌避を呼び起こすには十分すぎるインパクトがあった。
対峙してるオークも恐怖心からか、足が震えてるように見える。
「ブヒィィ!・・・ブヒャッ!?ブフッ!ブブゥッ!!」
「・・・あっ」
恐怖に耐えれなかったのか、オークはカマキリに突っ込んでいき・・・両手の鎌に捕まった。
そしてそのままムシャムシャされるオーク・・・うわっ、グロッ。
生きたまま食われるとか、最初の二匹の死にざまが幸せに見えるくらいだな。
「今のうちに逃げるか」
・・・うん。どう考えてもこのカマキリには勝てない。勝つ想像すらできん。
幸いカマキリは食事に夢中だし、逃げるなら今しかない。ボクは物音を立てないように、細心の注意を払いつつその場から離れる。
「プギャアアアア」
オークの悲鳴が木霊する中、ボクは命からがらその場から逃げることに成功した。
すまん、豚肉。お前の犠牲は無駄にしない。
供養として別のオークを食べるからな。安心して安らかに眠れ。
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