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神話の森中層部 オーク肉、実食!!
「ふむ、なるほどなー。大体分かったわ」
あのカマキリ惨殺事件から数日。ボクは気配を消すことに全力を置き、魔物の生態系を知るべく観察することに徹した。おかげで色々と分かったし、何よりボクの気配を消す技術が格段に向上した。
そんなこんなで分かったことだけど、何とこのエリアほとんど昆虫型の魔物しかいない。
カマキリの他にカブトムシ・アリ・カナブン等々、そして極めつけには・・・
「・・・カメムシは反則だろ」
そう、一メートルくらいのカメムシがいた。ボクが見つけた時は、ちょうど他の昆虫型の魔物と争ってる最中だった。負けそうだったカメムシが苦し紛れにガスを噴射し、その臭いを嗅いだボクは悶絶そして気絶した。
「あれは良く生きてたなボク」
隠れてたことも功を奏し、幸いボクは気絶中に魔物に襲われることはなかった。いやー、あれは本当にヤバかった。充分に距離を取ってたボクでも、一瞬で意識奪われたもん。
「あれは見つけたら逃げるしかないかなぁ」
戦うにしても、あのガスを防ぐ手段はボクにはない。っていうかあれを至近距離で噴射された瞬間、天に召される自信があるわ。
カメムシを見つけたら即逃げる。これに限るわ。見た感じだと、他の魔物もカメムシだけは避けてる節があるしな。
「となると、しばらくはオーク一択だな」
色々と観察した結果、このエリアで一番弱いのはオークだ。最早、このエリアの主食みたいな扱いと言ってもいいくらい弱い。
でも、なぜか数だけはすごいいるんだよね。不思議だね。
てことでね。まずはオークを安定して倒せるようになろう。このエリアを越えれないとエスバー共和国に行けないし、戻るにも今更ジルフィール王国にも戻れないしね。
ボクには進むしかないんだよねー、困ったことに。
「っと、噂をすれば何とかだね」
ちょうど良いタイミングで、オーク三匹が現れた。こいつらいつも三人一組で行動してるんだよな。
どうも生存確率を上げる為にそうしてるっぽい。観察してた限りでも、一匹は大体逃げきれてたしな。
「ブモッ」
「ブモブモ」
「いかにも肉食なのに、主食が木の実なんだよなぁ」
せっせと木に生っている果実や木の実を集めるオーク達。こいつらは草食だから木の実を主食にしてるわけではない。他の魔物にほとんど勝てないから、木の実くらいしか食べれるものがないんだよね・・・
前にオークが狩りに成功してる所を目撃したことあるけど、その時にオーク達の喜びようはすごかった。
獲物を囲んで大声で叫びながら踊り狂ってた。多分、滅多に食べれない肉が手に入ってよっぽど嬉しかったんだろうね。
でもその後に、大声を聞きつけてやってきた魔物にやられてたけどね。弱肉強食って世知辛いね。
「まっ、まずは一匹減らしてっと!」
「ブギャッ!?」
「ブギギ?」
「プヒッ?」
ボクは一番近くにいたオークの背後に斬りかかる。オークはボクの接近に気付けず一撃で絶命し倒れる。
その瞬間、ボクの中に懐かしい感覚が流れてくるのを感じた。
久しぶりに感じたその感覚に、思わずにやけてしまう。
「・・・まだボクは強くなれるみたいだ」
「ブギィッ!!」
「ブモッ!」
「うぉっ!あぶなっ!?」
ボクが惚けている隙をついて、オークが見事な連携で攻撃を繰り出してきた。ボクはそれを慌てて回避する。
いかんいかん。敵前なのについつい余韻に浸ってしまった。というか今のはちょっと危なかったな。強くなってなかったら、あの連携は初見では避けれなかったかも。
「ちょっと驚いたけど・・・」
「ギャッ!!」
「ブギギ!」
「それはもう効かない」
さっきまではともかく、もう今のボクの敵ではない。
「ブギョッ!?」
「ギョアッ!!」
ボクはオークの連携をものともせずに、一撃で斬り伏せる。
そして、また流れて来る懐かしい感覚・・・うーん、癖になりそうだわ。
「これは予定を改める必要があるな」
何にせよこれは嬉しい誤算だ。当初はリスク覚悟で魔物を避けながら森を抜ける予定だったけど、ボクがまだ強くなれるとなったら話は変わってくる。
「魔物を倒しまくって・・・食べまくるっ!」
この森は思ったより広い。ってことは、まだ食べてない魔物がわんさかいるはずだ。
・・・うへへ。あ、やべ。想像したらよだれが。
「まずはオークの味から確かめないとな」
オークはポーク、これは絶対間違いない。
ボクはオークを指輪に収納し、意気揚々と新しい拠点へと戻ることにした。
「よっし、こんなもんか」
ボクは綺麗に四角く切り分けられたブロック肉を見て、満足げに頷く。我ながら上手く捌けるようになったもんだ。
初めての人型の魔物を捌いてみたけど、不思議と何も感じなかった。やっぱあれかな、顔が完全に豚だったからかな?人型の魔物っていうか、二足歩行の豚っていう認識の方が強いかもしれん。
「それにしても・・・美しい」
オークの肉はあの見た目に反して、ピンク色に程よく差している霜降り・・・すごい高級な豚肉そのものだった。もうね、生肉の時点でわかるよ。この肉は絶対美味いわ。
「・・・焼くか」
もう我慢できない。ボクはオーク肉を枝に差し、じっくりと火で炙る。
「うひゃー、たまらん!我慢だ。まだ我慢だボク。耐えるんだ」
オーク肉が火に炙られて、とても香ばしい香りに脂がシュワシュワと沸き立つ音と零れるように垂れる肉汁が、ボクの空きっ腹に暴力的なまでに訴えかけてくる。
嗅覚・聴覚・視覚に訴えてくるなんて・・・は、反則過ぎるだろ。
「・・・あと少し、じっくりと」
だがまだだ!焦ってはいけない。耐えるんだボク。
ここで急いて肉を火に近づけてはダメだ。今の距離感が美味しく肉を焼くベストポジションなんだ。
どうせなら、一番美味い状態の肉を食べるべきだ。そうだろボク?我慢するんだ。
「出来た!頂きます!」
ちょうど良い焼き加減になったのを確認すると、ボクはオーク肉へかぶりつく。
「っ!!・・・なるほど、なるほどな!」
焼き上がったオーク肉は、脂身がとても濃厚でそれでいて脂が重くなくサッパリとした味わいだった。
今まで食べた魔物肉(ミミズを除く)は、旨味が濃縮されとても重厚な・・・簡単に言うと、コッテリしてて歯ごたえ抜群な肉が多かった。
いや、あれはあれで美味いんだけど。ずっとそういう肉ばっかり食べてたから、ここにきてサッパリした味の肉はとても新鮮だな。
「あんな見た目だから、もっと脂っこいのかと思ってたけど・・・あっ、主食が木の実だからか」
そういえば、木の実だけを食べさせて育てる高級豚の飼育方法があるって聞いたことあるな。
ここのオークは、このエリアで最弱だ。弱い彼らは必然と木の実しか食べる物がない。そしてその結果、肉が美味くなっていくと。
「これだけ美味いんだから、他の虫も好んで食べるはずだわ」
美味い物が食べたくても食べれないのに、自身の肉は美味い。はぁ~、世の中って残酷だね。
まっ、美味いから良いんだけどさ。
「はっ!?・・・待てよ?」
とんでもないことに気付いてしまった。こんなにも豚肉に近く、豚肉以上に美味いんだ。
もしかして・・・内臓や舌も美味いのでは?
「いやしかし・・・うーん。でもっ!?」
この悪魔的閃きに、ボクは頭を抱えて苦悩する。
王国では当たり前に食べてた物だけど、今は状況が違う。あの内臓を捌くのか・・・?
「・・・むぅ」
いや、グロい無理。いくら肉を捌くのに慣れたボクとはいえ、内蔵はまた違った気持ち悪さがある。
障るのにちょっとと言うか、かなり抵抗があるな。でも・・・めっちゃ興味がある。
「・・・美味いんだろうなぁ」
肉がこんなに美味しいんだ。ホルモンも絶品の可能性が高い。
せめて、オークが四足歩行だったら・・・いきなり人型の内臓はレベル高いっす。
あああああ、でもボクの知的探求心と食欲が捌け!食べろ!と訴えかけてきている。
「ああああああああああ」
ボクは、理性と本能の狭間で雄たけびを上げる。
その雄たけびは、三十分ほど森中に響いた・・・
美味しかったです。
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