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「三嶋先生、今日もこんなに落とし物が……まったく、困りますよね」
放課後、校内巡回担当の教師がダンボール箱を抱えて職員室にやってきた。
箱の中には校内に落ちていた大量の落とし物が入っている。ペンや消しゴムなどの文房具が中心だが、中にはハンカチやキーホルダー、それだけならまだ良いが時計や定期などの高額な物もあり、生徒指導部の間でも問題となっている。
俺も先程、廊下でおそらくわざと落とされたであろうピンク色のシャーペンを拾った。
「またですか……生徒の間で変な噂が流れているみたいですし、明日の朝のホームルームで担任の先生方に注意してもらいましょう」
俺は箱の中に拾ったシャーペンを入れながら深くため息をついた。
教師になって4年。2つ目の勤務先となるこの学校では、生徒指導の担当となってしまった。
ただでさえ授業の準備と部活動の顧問で疲弊しているというのに、問題児への指導と地域住民からの苦情対応、整容指導やその他諸々の業務に追われ、ストレスもそろそろ限界に近づいている。
それに追い討ちをかけるように出てきたのが「拾い愛」という噂話だった。
生徒の話によると、互いの落とし物を拾い合った男女が結ばれるという都市伝説のようなものらしいが、最近付き合い始めた生徒の出会いが落とし物だったらしく、そんな噂がまことしやかに囁かれるようになったそうだ。
それからというもの、恋愛に憧れる女子を中心にわざと落とし物をするという行為が続いている。
「三嶋先生、お忙しいところ申し訳ないのですが、例の生徒の指導をお願いします」
「あぁ……分かりました」
申し訳なさそうな顔をして話しかけてきた年配教師にそう返事をして、俺は席を立つ。
きっと度々授業を無断で欠席している元優等生だ。もう何度も生徒指導の対象として話をしているが全く聞く耳を持たない。
「いい加減にしてくれよ……」
ため息混じりにそう言って、俺はその問題児が詰め込まれているであろう生徒指導室の扉を開いた。
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