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ピンクのシャーペンと聞いて思い当たる節があった。今日の放課後、つい数十分前に廊下で拾ったのは、確かにピンク色のシャーペンだった。
「……ちょっと待ってなさい」
俺は職員室に置かれたダンボール箱を漁る。先程ピンク色のシャーペンを入れたあの箱だ。
「あった……」
俺はそれを持って指導室へと戻る。
「これのことか?」
相沢にそれを差し出すと、彼女は「それです」といつものように柔らかく、花が咲くように笑った。
「良かったな。気をつけて帰れよ」
いつも通りの彼女に安堵して、俺は彼女を送り出した。
すると相沢は「あともうひとつ」とポケットから見覚えのあるボールペンを取り出す。
「これ、三嶋先生のですよね? いつも胸ポケットに入ってるやつ」
そう言われて俺は初めて胸ポケットを探る。いつも入れている赤と黒のボールペンのうち黒のボールペンがなくなっていた。
「あぁ、そうみたいだな」
「ふふっ……うちのクラスに落ちてましたよ」
相沢はそう言いながらボールペンを差し出してきた。
「ありがとう。助かったよ」
俺は相沢からそれを受け取り、胸ポケットにしまう。何となく心が落ち着いた。
相沢はそんな俺を見て「ひろいあい……」と呟いた。そして……。
「……噂が本当になるかもですね」
悪戯っぽく笑う元優等生に、俺の中で何かが弾ける。
いけない恋の始まりだった……。
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