9人が本棚に入れています
本棚に追加
もちろん以前から彼女のことは「かわいい子だなあ」と思っていたのだが、その時から僕は彼女がかなり気になる存在になってしまった。好き……と言えるかどうかはまだわからないけど、この気持ちはたぶん、限りなくそれに近いような気がする。
だから、彼女のスマホの画面にずらりと並んだアイコンの中に、「小説」と書かれたソレを見つけてしまった時、思わず僕はそれをタップしていた。彼女が書いている小説を読んでみたい、という欲求に勝てなかったのだ。
ややあって、テキストエディタの画面が開かれる。どうやら彼女はエディタに下書きをしてから小説サイトに投稿しているらしい。これはその下書きなのだろう。
……。
それは、彼女と同じ学年の「タクマ」という男子高生が一人称で語るタイプの恋愛小説だった。「トキナ」という恋人との出会いから、告白、デートといった甘酸っぱい日々が、意外にしっかりした筆致で描かれている……
の、だが……
ええと。
「トキナ」って、田室さんの下の名前だよな……
そして……
僕の下の名前も……「拓真」なんだけど……
その時だった。
「旭くん……」
声の方に振り向くと、愕然とした表情で凍り付いている田室さんと目が合った。
最初のコメントを投稿しよう!