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しまった……なんてことだ……
彼女はスマホを落としたことに気づき、探しに来たのだろう。そして、僕がそれを拾って中身を見ていたところを……目撃してしまった……
「……!」
田室さんの目から大粒の涙が次々に転がり落ちる。そして彼女はいきなり踵を返して駆けだした。
「待って! 田室さん!」
弾かれたように僕も彼女の後を追って走り出す。彼女の足はそれほど速くない。東階段の手前で難なく追いついた。彼女の右の手首を掴んで無理矢理引き留める。
「放して!」
田室さんがブンブンと右手を振り回すのにも構わず、僕は彼女を自分の正面に引き寄せた。そして深く頭を下げる。
「ごめんなさい!」
「旭くん……?」彼女の抵抗が止まる。僕は90度体を折り曲げたままで、続けた。
「本当にごめん! 他人のスマホを見るなんて……最低なことをしてしまって……田室さんの気が済むなら、先生に言いつけていいから……何なら、警察に言って逮捕してもらったっていい……それだけのことをした、って僕は思ってるから……」
「……」
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