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「ん?どういうことだ?」
彰人は首を傾げた。
「言葉の通りだよ。僕はこの学校から出られないんだ。」
彰人は腕を組んで、うーんと唸る。そして窓の外を指差した。
「ってことは、あの校門を抜けられないってことか?」
僕は強く頷いた。彰人は至って真面目な表情で聞いてくれた。それがたまらなく嬉しかった。
「じゃああれか?校門を抜けようとすると、見えない壁に弾き飛ばされるみたいなことが起こるのか?」
「ううん。意識がなくなるんだ。」
放課後になり、皆がぞろぞろと教室を出ていく。僕も鞄を持って立ち上がり、その後に続く。そして階段を下りて、下駄箱から靴を取り出すところまでは覚えている。でも、校庭に出て校門の前に行った後の記憶が、ない。必ずここでなくなる。だんだん周りが暗くなっていって、音も声も聞こえなくなっていく。身体から力が抜けていき、そのまま目を閉じてしまう。
毎日自分に起こるそんな現象を、彰人に話した。
「そこから先は覚えてないのか。」
「うん。」
僕は弱々しく頷いた。
「でも帰る時、いつも一人なわけじゃないだろ?一緒に帰る友達は何か知らないのか?お前が校門を抜けたときの様子とか。」
「それは僕も思った。だから友達に聞いてみたんだよ。でもみんな覚えてないんだ。」
中には「一緒に帰ってない」と言い出す友達もいた。自分も覚えていない分、その発言を否定することもできなかった。
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