#32 揺らぎの少年 8 至生 (完)

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#32 揺らぎの少年 8 至生 (完)

子どもの時に見あげていた高校生や大学生はやけにでかくて、なんでもできそうな大人に見えた。 彼らは鼻を袖で拭かないし排泄系の下ネタでゲラゲラ笑わない。 ガキの俺からみた彼らは賢そうで、三桁のかけ算を頭の中でばしばしキメてしまうようなキレキレに見えた。 身近にいた聖人は高校生のときから大人達の中にいた。静かに談笑している姿は俺に接するときと別人のようで、遠くに感じられた。大人に対等に相手されていて凄いと思った。 気配りや落ちつき、モチベや実行力などの能力は大人になると本人の意志とは関係なく自動アップデートで実装されるものかと思ってた。 高校で身長が伸び、大学に進むと声も低くなりひげもまばらに生えてくる。骨も少しゴツくなっておっさんじみてきた。 なのに、なのに……俺の基本部分は小学校低学年から変わらない。 大学生ってすげーっと眺めていた彼らの年齢に達しても、俺は管理や責任を果たせずに聖人の手を借りていた。マナーも慎重さも計画性も道具箱ごと小学校の机の中に置き忘れてきたみたいだ。
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