#2  全力拒否

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聖人が俺の送迎に付き添うことになっていた。 試験が終わった。 聖人の運転で家に帰る。 持参した薬のストックは会場で全てなくなっていた。薬の効果が切れる前に早く家に帰りたい。 車に乗ってから体が熱くなりだした。急激に胸がドキドキしてきた。運転席の聖人から凄くいい匂いがする。匂いにつられて顔がのぼせて赤くなるのがわかる。 ネクタイを外し、シャツのボタンを開け喉元を緩めた。息が荒い。 後部座席で横になる。 熱いし、目まいがすごい。腰の奥が切なくて、どうにかなりたい、どうにかしてほしいと奥が喚いている。 俺の身体のこの空洞を埋めて欲しい。勝手に中イキしてるのか中がきゅうきゅうと勝手に収縮して痛い。 ズボンの上から、どくどく疼く別の生き物みたいな股を強く押さえつける。自分の手を中に突っ込みたい。突っ込んでかき回したい。 切なくて、切なさが喉を食い破りそうだ。 家に到着し車が停まった。自分で起き上がろうとして、めまいでよろける。聖人に背中を支えられ、車から降りた。 地面に立つと股の間から何かの液体が足下に垂れる感覚があった。 同時にサーッと血が一斉に下に落ちるような感覚をくらい、目の前が光を失いくらくらする。 足に力が入らず、思わずしゃがみ込みそうになる。 聖人は崩れる俺を足元から抱えあげ、急いで家に入った。 聖人に触れられた箇所はじわりと熱をはらみ、やけどをしたかのように、じくじく痛む。 聖人からは、すこぶるいい匂いがする。胸に身体をもたれかけ、頭をなすりつけた。聖人に抱きつきたい。なめつくしたい。しゃぶりつきたい。 熱く、ぐじょぐじょになっている股の間をかき回して欲しい。 よく分からない衝動で熱い吐息が漏れる。 聖人も俺に何かしら感じてるようで、俺を抱く手は汗ばみ震えていた。 聖人の顔を見上げると、その顔は真っ赤に上気していた。そして顔を背け俺を見ないようにしていた。聖人は俺をベッドに降ろすと 「ほかのαが来るかも知れないので、抑制剤を飲んだ後は鍵を掛けておいてください」 戸棚から取り出したペットボトルと抑制剤を渡してくる。 受け取ってナイトテーブルにおいた。 「ま、聖人、なんとかして。助けて……」 俺は切なすぎる辛さに涙を流していた。目の前の聖人にふれたくて仕方ない。聖人に触れられた箇所が熟れて熟れてじくじくと腐りだしそうだ。 「……俺には、何とも」 聖人は俺を見ない、匂いを吸い込まないようにして、顔を背けて立ち去ろうとしていた。 俺は聖人の腕を引っ張り、体勢が崩れた聖人の唇に強引に唇を合わせた。 目を開いたままの聖人と目があった。瞳の中は揺らぎ、粘ついた欲情で濡れていた。 聖人も俺と一緒なんだ。歓喜が駆け抜ける。 視界が揺れてぐにゃっと曲がった気がした。気がつくと聖人にドンっと突き飛ばされていた。 「やめてください。貴方とこんなことはしたくないんです」 聖人は顔を上気させて、唇を拭って足早に部屋から出て行ってしまった。
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