#31 揺らぎの少年 7

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私を見る至生の目がまれに揺らぐことがある。それは一瞬だけ現れ直ぐにたち消えるかぎろいのよう。昔からあったと思うけれど私が違和と捉えるようになったのは、つい最近のことだ。 その視線は少し哀しみの色を帯びているようで引っかかりをおぼえた。至生は私の中に何かを見いだしてるように見える。 この反応は弟には見られず私にだけ。聖人には全くみられない。至生は隠しているつもりらしいけど、私は気がついてしまった。 それを目にすると自分の居場所を間違えたような気がして、ここに居ていいのかと戸惑ってしまう。 法事に集まる親戚の人たちが誰が何を継ぐとか噂をしていた。私が席を外している間に誰かが私の種が違うとか言ってる。種って何? 西岡の話がでてる。西岡は三智の実家だ。何でここで三智の名前が挙がるの? 今までも私に時折向けられていただろう好奇まじりの視線。冷静に考えたら答えが透けそうな気がする。でもそれを追及したら私の世界が変わってしまう。 本当は知りたくてたまらないのに、心の安定を優先してなにも聞かなかったことにした。
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