#31 揺らぎの少年 7

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普段、至生はあほなことを言って周りを少し困らせている。困らせる内容は少し努力すれば何とかなるもの、いつもそんなことばかりだ。 周りは仕方ないなぁと言いながら至生の願いを叶える。不思議なのは頼られる側が少し嬉しそうなのだ。 なんであほな事を言うの? と至生に聞いた事がある。至生は俺の役割だからという。意図的にやってるのか聞くと、適当に考えもせずやってるという。 「考えないの?」 「あんまり。俺は、考えるより感じたことを優先してるかなぁ」 よく管理運営の仕事が務まるとあきれてしまう。至生は親族がやっている社会福祉法人の理事などをやってる。うっかりミスを頻繁にやらかして周りの人に助けられているときく。側には聖人もいて三智も至生のことを気にかける。 三智は至生の話になると眩しそうな表情を浮かべる。私は三智にそんな表情をさせる至生に嫉妬する。 至生はずるい。至生には聖人がいるのに。 私は喧嘩のあと、皆の口が重くなる"私の生まれ"という情報を無理やり集めた。整理をしていくと、あれは事故であったという事に落ちついていく。 私に今後(自分に)会いたくなくなるだろうと三智が言った意味はわかった。意味を知っても私は変わらないけど。 でも事故なら、なぜ三智はあんな表情をするの? 至生の名前が出ると眩しそうな表情をするの? 私の親がはっきりすれば、私ごしに至生を見る三智は私自身を見てくれる? もし親子だったら恋愛は無理だけど繋がりは一生もてる? 「親を調べることにした」と三智にそう送ると「いいんじゃない」と肯定的なメッセージが返ってきた。 三智の子どもではないとわかったら三智は私に価値を見いだしてくれる? 異性としてもアルファ性としても性的指向は異なっているけれど。
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