#32 揺らぎの少年 8 至生 (完)

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そんな不変の俺でも子ども時代から明らかに変化した事はある。一つは性欲という新しい興奮と身体活動が付与されたこと。実は昔から、らしきものは存在していた。ただここまで露骨に主張し始めたのは思春期を迎えてからだ。 そいつがいっぱいになると腰辺りがもぞついて落ちつかなくなる。ねばつきもにょついたものが膜をつくり、徐々に俺を覆う。視界も思考も身体も少しづつそいつに侵食されていく。 見るもの全てがエロに結びつき、森を見ても、路上の車を見ても、チョコレートや男子学生のシャツについたケチャップ汚れですらエロく感じる。 今、車が縦に揺れた? とまじまじと確認してしまう。気のせいなんだけど、ほんとそんな時の俺はどうかしてる。 心理描写の表現でザワザワという効果音がつく漫画がある。それと同じように俺の身体周りにもにょもにょという効果音がまとわりつくみたいだ。 日々のルーティンに処理が加わった。どうせなら楽しくやりたい。俺はさまざまな手法や快楽を自分なりに模索する。いくつかの手法を試してたどり着いたのが皮オナ。単純なものだったけれど快楽の加減がちょうどよくて好みだった……。 ヒートや前立腺街道をばく進中の今、そんな素朴な時代には戻れない。俺の性趣向もすっかり変わってしまった。
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