#4 聖人 1

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#4 聖人 1

コンクリートむき出しの平屋の住宅。 林の中の平地には辺りには似たような住宅が建ち並び、庭の物干しざおに干された色とりどり洗濯物が生活の匂いをふりまいていた。 ここに3つ上の姉と母と三人で暮らしていた。 家には遊ぶものがなくて、空き缶を拾い草をむしっては土と混ぜ込んで遊んでいた。 となりの家の壊れ放置された三輪車は、放置されすぎて錆びつき土にめり込んでいた。 あちこちに散らばる壊れたプラスチックバケツのかけらが土に彩りを添え、草むしりから逃れた、まばらな雑草が僕の背ぐらいの高さで揺れていた。 家には何もなく、常に開け放たれた玄関。タタキに脱ぎ散らされた靴やサンダル。すり減ってけば立った畳。 ここが僕が14歳まで暮らした世界だった。
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