生きた証

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 沸騰したお湯の中に、袋から出した麺を入れる。その中にキャベツをざく切りにしたものと、卵を落として蓋をした。  キャベツと卵に火が通るまで待つ。ソファでは相変わらず逸郎がゲームをしている。  先ほどの早苗の話を思い出す『こうやって日常に埋もれて。会社にこき使われて、心をすり減らしていって、それで何が残るんだろうって』。  あれは人ごとではなかった。  早苗だけの問題じゃない。こうして、何も言わないで。相手がいつか変わってくれるかもしれないと、期待して時間を費やして。ただただ、自分が消費されていく感覚。そこに憤りを感じていないというのは嘘だ。  この人との関係は、私に何を残してくれるのだろう。
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