生きた証

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 一昼夜経って、早苗は昨日より元気に見えた。  仕事終わりの時間と言うことで、居酒屋で話すことにした。簡単な間仕切りのある個室タイプのところを選んだ。  根っからビール党の早苗は一杯目を一気飲みした。私はレモンチューハイをちびちびちとやりながら、茄子の浅漬けをつまんだ。 「いきなり別れたって聞いてびっくりしたよ」 「うん、まぁそれまでに降り積もったものもあるのよ」  分かるでしょ。と、声にせず口にする。  その仕草を横目で見ながら、早苗はメニュー私を交互に見て、次に飲むものを決めている。すぐに決めたのか、テーブルにあるタッチパネルで注文していた。 「私のほうはさ、やっぱり辞めることにしたよ」 「そっか。まぁ、決めたことを止める権利はないからね。心配だけはさせないで欲しいと願うばかりかな。次の仕事は決まってるの?」  レモンチューハイを一口飲む。飲みやすいのはシロップも入っているからだろうか。 「決まってない。でも、フリーランスで仕事していこうかと思ってさ」  フリーランスと聞いて、私は早苗の目を見返した。 「フリーランスって、何か資格とか持ってるの?」 「持ってないよ。これから勉強する。実績もちょっとづつ作れば、生活するぐらいはなんとかなりそう。そこで私は『生きた証』を作りたいなって思ってる」
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