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流れ星に願ったら、星の神様が現れた件について
星が流れた。
その瞬間、香帆は慌てて手を合わせて目を閉じると、微かな声で願いを三回唱えた。恐る恐る目を開くと、星はまだ、流れている。
いつもなら一瞬で消えてしまうはずの流れ星は、それから数秒間も空を走り、ようやく闇に消えた。
「な~んて。流れ星にお願いしたからって、叶うわけないわよね」
いつもより長く光った流星を見届けた香帆は、一人、家路を急いだ。
『流れ星が見えてる間に、3回願い事を言うと願いが叶うのよ』
そう言って母は、夜の空に、流れ星を探していた。
『お母さんは、どんなことをおねがいするの』
幼かった香帆がそう尋ねると、母は微笑んだ。
『香帆が、ずっとずっと、幸せでいられますようにって』
『じゃあ、私もお星さまにおねがいする。お父さんとお母さんといっしょに、幸せがつづきますようにって』
香帆がそう言うと、母は香帆を抱き締めた。
『ありがとう、香帆は優しい子ね』
しかし、願いは叶わなかった。
ただ両親と共に、幸せに暮らしたい。そんなささやかな願いだったのに。
間もなく、両親は交通事故で逝ってしまった。
それから香帆は、喫茶店を経営していた父方の祖父母に育てられた。商店街の中にあり、地域の人々が集う店で、その二階が自宅になっていたから、学校が終わった香帆は、決まって2階の自宅ではなく、1階の店舗に帰宅した。そうすれば、忙しい祖父母に代わって、常連客達が遊んでくれたり、宿題を見てくれたりしたのだ。
その頃の自分は、両親に会えないことは悲しかったが、決して不幸ではなかったように思う。
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