流れ星に願ったら、星の神様が現れた件について

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『おかえり、香帆ちゃん』 『お仕事、お疲れ様』  いつもなら、そんな風に祖父の元常連客が声を掛けてくれるが、今日は静かだった。週末と月末が重なって残業が長引き、9時を回っていた。夜の早い商店街は、どの店もシャッターが閉まり、ひっそりと静まり返っている。  香帆は変わらず、祖父母が残した家に住んでいる。1階にあった祖父の喫茶店はもう無いから、一年中、シャッターが降りたままになっている。2階の自宅へは、外階段を使って上がる。  玄関の前に、人影があった。 「誰?」  大声を出せば、近所に聞こえるだろう。この町の人たちはお節介で、特に香帆には過保護だから、すぐに駆けつけてくれるはずだ。  そう思いながら、慎重に相手の様子を窺う。  背が高く、頭には妙に背の高い帽子を被っている。よく見れば服装もおかしい。平安時代のような服だ。神主でなければ、コスプレ以外の何ものでもないだろう。  ちなみに、近くの神社の神主は、普段着は革ジャンに革パンだし、重要な神事の時以外は、仕事中は袴姿だ。神主だとしても、知り合いではない。 「星村(ほしむら)香帆さんですね」  見蕩れるほど整った顔立ちから、涼やかな声が発せられた。 「あ、あなたは……誰。人の家の前で……なんで、そんな恰好……」  優しげで穏やかなのに、妙な迫力を感じた香帆は、しどろもどろに問い詰めた。 「これは失礼。私は、あなたの願いを叶えるために、やってきました。天津甕星(あまつみかぼし)と申します」
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