流れ星に願ったら、星の神様が現れた件について

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「あ、あまつ……みかぼし?」  一応、相手は名乗ったらしいが、人の名前とも思えない単語に、香帆は余計混乱する。 「星の神、と言えばわかりますか」  微笑みを浮かべてそう言われ、香帆は我に返る。  自分のことを神と自称する人間が、まともなわけはない。ここは、さっさと警察に頼る方がいいと判断する。 「はっ?あの、帰らないと警察呼びますよ……」  香帆は、スマートフォンを出した。 「それは困るので……ちょっと強引ですが、失礼します」  そう言うと、天津甕星と名乗ったコスプレ青年は、あっという間に香帆を抱き上げ、鍵が掛かっている扉を開けることもなく、通り抜けた。 「え、ちょっと、今の何……」  香帆は、上着のポケットに玄関の鍵が入っていることを確認する。鍵を開けた覚えはない上に、内鍵は掛かったままだ。  どう考えても、玄関の扉をすり抜けたとしか思えない状況に、香帆は自分の頬をつねる。 「申し訳ありません。外で騒がれると困るので、力を使いました」  詫びの言葉を口にしながら、全く反省の色の無い笑顔を向けられる。 「いや、その……それじゃあ、本当に、本当に神様だというの」  力を見せられても、香帆は半信半疑だった。まさか本当に神が存在するなど、こうして言葉を交わしているなど、にわかには信じがたい。
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