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「はい。我が名は天津甕星。かつて、まつろわぬ神として高天原を追われた星の神です。そして貴女は、代々私を祀る一族の裔。私の巫女です」
そう言って天津甕星と名乗った青年、もとい神は、香帆の両手を握る。
「私が、巫女?いやだって、巫女服とか持ってないし」
そう言って後退る香帆だったが、天津甕星は、握った手を離そうとはしなかった。
「装いなど、どうとでもなります。それより、詳しくご説明したいのですが……」
かつて、天照大神が豊葦原中国つまりこの地上を平定する時、高天原を追われたのが、星の神である天津甕星だという。そのため神力を弱め、彼を信仰していた一族の加護が難しくなった。そこで彼らはやむなく、天照大神の元に下った。しかし秘かに天津甕星を祀り、その祭祀を継承し、それは現代まで続いている。
香帆の母は、その一族の、それも本家の出身だという。
本来なら、分家の男と結婚するはずだったが、香帆の父と出会い、周囲の反対を押し切って駆け落ちした。
同族内での婚姻を繰り返すだけでは、子孫が先細りするため、外部の人間と結婚する者もいる。しかし香帆の母は、本家の跡取り娘であった。そのため、一族を取りまとめ、祭祀を継承するためにも、分家から伴侶を得ることが定められていたのだ。
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