流れ星に願ったら、星の神様が現れた件について

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 香帆が淹れたインスタントのドリップバッグコーヒーを飲みながら、天津甕星は、自身と香帆の母の郷里について語った。  カップを扱う長い指が、繊細で優雅な動きを見せる。 「えっと……すぐには信じられないけど。それが本当だとしても、どうして私なんですか。母の郷里には、巫女になれる人たちがたくさんいるのでは……」  彼の話が真実だとしても、香帆でなければならない理由など無い。そもそも、一族を捨てた母の娘に、巫女の資格があるとは思えなかった。 「いえ。次の世代には、女子が産まれず、香帆さん以外は男子だけなのです。幸い、その次の世代の女児は何人かいますが、まだ幼い。巫女になれるのは、月のものを迎えた純潔の乙女だけ。巫女になる者が流れ星に祈りを捧げ、私はこの世に現れる力を得ます」 「だからって、別に私はそんなつもりで……第一、なんで私が未経験だって……」  涼しい顔でコーヒーを飲みながら説明する天津甕星に対し、香帆は顔を真っ赤にした。  先日振られた彼とは、結婚するまではと清い関係だったし、彼以外に、親しく交際した男性はいない。神とはいえ、男性の前でそういう話をするのは、気恥ずかしかった。 「男性を知る者に、私は呼び出せません。私が貴女の前にこうして姿を見せたことが、貴女が純潔の巫女である、何よりの証です」 「……それで、私は何をしたらいいんですか」
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