流れ星に願ったら、星の神様が現れた件について

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「巫女は生涯を神に仕えて祈りに捧げるか、次の巫女が現れたら、退いて一族の男性、特に神官と婚姻するのが普通なのですが……」 「それじゃあ、巫女になったって、私の願いは叶わない」  香帆が抗議すると、天津甕星も困った顔を見せた。 「そうなのです。叶わぬ願いであれば、いくら純潔の乙女が願っても、私はこの世に現れることが出来ません。しかし、何故私はここにいるのか、どうすれば貴女の願いが叶うのか、わかるまでは、天に帰ることもできません」  これが香帆と、不思議で怪しい青年天津甕星との出会いだった。  翌日、香帆が目を覚ますと、祖父母の部屋で休んでいたはずの天津甕星の姿は無く、用意した布団と浴衣は、元の場所に仕舞われていた。  夜遅くまでの残業の疲れと、珍しく長い流れ星に、夢でも見たのだろうと、ほんの少し、落胆を覚える。  しかし、台所の水切りかごには、二人分のコーヒーカップが置かれている。それではやはり、天津甕星はこの部屋にいたというのだろうか。  香帆はしばらく逡巡した後、気を取り直して簡単に朝食を済ませると、外出の準備をした。
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