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「それじゃ今後の戦略練ろう。」
「戦略?」
「ちょうどいい事にまだ社内報は、完成していない。この前のでも常務のイメージが塩対応とか厳しそうからまさかの愛妻家!!になるとは思っていたけど、せっかくその妻がいるんだから妻から見た常務って記事も足したら良くないか。」
「えっ。」
あの聞いている時も苦行で、河田さんの原稿チェックも途中で投げたくなったあのインタビューを踏まえて、私が書くの?
公開処刑される気分なんですが。
「唯奈は広報課の仕事をちゃんとやりたいんだろ。ここは先輩の言う事を聞いてふたつ返事でやるところだよな。」
聡さんまで乗り気になってしまった。
河田さんは味方だと思っていたのに…
「それじゃ頼んだぞ。」
そろそろ次の会議があるようなので、退室しようと立ち上がると河田さんが、思いついたように言った。
「了解っ。あ、岸川、松本っちゃんが落ち着いたら、伊勢崎も誘って同期会やろうな。あいつ、岸川が結婚したなんて聞いたら、びっくりするだろうな。」
「いや、卓は知ってる。」
「何、それ。いくらふたりが大学ん時から仲がいいとは言え、冷たくない?」
「悪い。会議の時間になるから話はまた今度。すぐに聞きたければ、ある程度は唯奈に聞いてくれて構わない。ただ唯奈が拒否したら、それ以上はダメだからな。」
聡さんは、腕時計に目を落とすとポールハンガーに掛けてあったジャケットを着る。
さすがに時間切れと分かった河田さんは私を伴い、もう少し話を聞きたかったと言う顔をしたまま部屋を後にした。
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